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2018年3月24日 (土)

<やさしい日本語>

 一昨年夏、ちょうど私が日本語支援のボランティアを始めた頃、『やさしい日本語』 (庵功雄、岩波新書) が刊行された。
 副題に 「多文化共生社会へ」 とあるように、多文化共生社会を共に築く条件として <やさしい日本語> の確立と普及を志向する筆者の考えに私は強く共感している。

 それ以前から、外国人と日本語でコミュニケーションする発想は、荒川洋平氏 (東京外国語大学) などから示唆を受けていた。
 特に、荒川氏が、観光に訪れる外国人と (やさしい) 日本語で話す工夫を提案しておられることはきわめて興味深かった。

 庵氏は、さらに、多文化共生社会を築くという観点で <やさしい日本語> を説いている。
ゆえに、めざすところがかなり近く、この書は、私が日本語に向き合う原点のひとつになっている。

 ただし、日本語の専門家でない私にできるのは、<やさしい日本語> の初歩で、どのような取り組みが可能かを探ることであり、日本語をどのように運用するかの意識や思考と向き合うことである。
 活動の場は、子どもたちの学びの場であり、
これについては、さらなる実践的研究 (試行錯誤) が課題となっている。

 ・・・
 ここでは最後に、市内の早稲田大学人間科学部のゼミと連携する試みが進んでいることに関連して、最近のメールを公開し、<やさしい日本語> への対応の現状を整理しておこう。

-- 以下、メール (修正済み) より

○○先生
こちらこそ、ありがとうございました。

 当方、昨日は日本語教育研究科主催の第8回「年少者日本語研究フォーラム」に参加しておりました。
 様々な年齢で来日した、進学を希望する高校生への支援の具体的事例研究でしたが、有益であったと思います。
 すなわち、子どもたちが自身の生を見つめ直しながら将来の生き方を考えたり、複数の言語資源をもつ主体であることに気づいていく事例などが印象的でした。
 何よりも、子どもに親身に寄り添い、創意工夫して ”コーチング” していく様々な実践は、私の教師経験の核心に重なるものだったと思います。

 その際、庵功雄氏の説く、学習言語へのバイパスとしての <やさしい日本語> は不可欠なものと考えています。

 先日、来日したばかりで学習会に加入した新中一になる子どもへは、とりあえず 『ことばと文法集中学習 小学一年生』 (くもん出版) を推薦していますが、これが、私たちの <やさしい日本語> の第一歩です。
 これからは、<やさしい日本語論理> を学ぶことも必要になります。

  庵先生は <やさしい日本語> を独自に確立~普及する道を模索されているようで、私はその問題意識と試みに強く共感しております。

 <やさしい日本語> がどのように確立されるかは、やや学術的なことですので、実際にボランティアに関わる実践者には、氏の講演内容を受け止めにくい面はおおいにありえたと思います。

 私が大学生に考えていただきたかったのは、<やさしい日本語> が多文化共生にどういう意義をもつかという観点でした。

 なお、『やさしい日本語』 にはひとつ気になる難点があることも確かで、筆者は日本語教育の場を 「学校型」 と 「地域型」 にしか分類していません。
  この分類で 「学校型」 は、文字通り日本語教育専門家による日本語指導です。
庵先生の分類に 「学校教育型」 が入っていないのは、子どもを前提にしたときには非現実的だと思われます。

 ところで、私が、先生のメールで気づかされたのは、米国在住時の立場で解釈する姿勢の有効性でした。

 そういえば、英語にも <やさしい英語> があり、それは国家が提供するVOA放送など、さらに欧州発の Globish に現れている。
 これらは、1500語に使用言語を限定した 「共通言語化」 を志向していますが、主要単語の1500語はフル活用できれば6000~7500語相当となり得ますから、日常言語を越えたかなりのコミュニケーションが可能と考えられている。

 日本語の共通言語化にこうした試みを参考にすることは <やさしい日本語> の実用化に大いに寄与すると思いますが、その展開は 『やさしい日本語』 のなかにすでに含まれていました。

  長くなるので、このあたりで。
  ゼミの学生たちが、多文化共生社会、あるいは持続可能な社会の多様性豊かな地域づくりへの問題意識をもってくれればこれに優る喜びはありません。

  昨日のフォーラムで一緒だった大学院生は、自分のテーマに最も役立ったのは、様々な体験での出会いだったと言っていました。
 是非、学生たちが、単なるお手伝いに終わらず、活動を通して自分のテーマを確立していくことを期待します。

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