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2016年6月14日 (火)

すごい畑のすごい土

 この春は、(以前は予想だにしなかったことだが)、農業の面白さに嵌っている。
農業の深さに触れるにつれ、その栽培のあり方に疑問をもつようになり、そのあり方の方向性を模索するに至っている。

 具体的には、農業には次の4つの栽培法があるが、自分が選ぶのはどれか、ということである。

1. 化学肥料と農薬を使った一般的な 「慣行栽培」
2. 化学肥料と農薬を使わずに、有機資材だけを使う 「有機栽培」
3. 化学肥料と農薬を使わずに、自然に任せる 「放置栽培」
4. 化学肥料と農薬を使わずに、生物の力の活用する 「自然栽培」

 実際には、もう少し詳細にみて、1には1’として、「低農薬栽培」 などの中間的かつ現実的なあり方も存在する。

 このデータも含めて、最近読了した本は、これまでで最も大きな学びを得たものだった。

 大学の教員が書いているためか、実践事例の観察を科学的に解説しようとしているが、模索する者としては、志向の筋道がかなり明確に整理できてきたように思える。
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 『すごい畑のすごい土~無農薬・無肥料・自然栽培の生態学』
 (杉山修一、幻冬舎新書、2013)

 本書は、生態学の観点から、自然栽培の代表者の一人として知られる木村秋則氏の (無農薬・無肥料の栽培に成功した) ”奇跡のリンゴ園” の秘訣を解説している。

 自然栽培と言っても、放置ではなく、三種の ”生物の力” を活用する生態システムを監督することが肝であるとして、その内容を丁寧に整理している。

※三種の ”生物の力” とは、

(1) 「植物-土壌フィードバック」
・・・ 生物の多様性が土壌微生物を活性化させ、生態系の機能を強化すること

(2) 「生物間相互作用ネットワーク」
・・・ 天敵を含め、生態系の共生システムの創発を生み出すこと

(3) 「植物免疫」
・・・ 共生微生物により免疫機能が活性化すること

 そういえば、先日購入して手元にある 『農家が教える自然農法』 (農文協、2016) にも、杉山氏の論考 (pp.57-61) と木村リンゴ園の取材 (pp.87-89) が掲載されていた。
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「木村秋則さんの自然栽培リンゴはなぜ病虫害を受けないか」 (2010)
「無肥料・無農薬リンゴ園の土は草がつくった」 (2010)

 2013年刊行の本書は、2010年の取材内容とかなり被っている面もあるが、国内外の科学的研究の光を当てている分、説得力を増しているように思える。

 ここでのキーワードは、「多様性」 「循環性」 「地産地消」 ではないかと私は解釈している。

 さて、生態学的観点を総じて言えば、
人間主体で育て上げる農法ではなく、植物主体の自然の力を活かす農法である。

 教育畑に居た私が、主体に関して、自分事に引きつけて表現すれば、
教師主体で教え込む授業でなく、生徒主体の学ぶ力を活かす授業と言えそうだ。

 このように、自分事で対比すると面白かった。 

 もっと書くと、慣行農業は、収穫を重視すれば捨て難いだろう。
ゆえに、時代とともに変化 (進化) しながら、生き残っていくのだろう。

 従来型の授業も、一斉授業の効率を重視すれば捨て難い面もある。
ゆえに、時代とともにその姿を変えながら、生き残っている。

 また、教師の意識も、知識の量だけでない本質的な学びを (たとえば、アクティブ・ラーニングの導入のように) どう支援できるかが問われるようになっている。

 同様に、農家も、これまで通りの化学肥料と農薬の投入で、大量生産のみを志向してきたのを、環境に留意した持続可能な農業へ意識変革が問われていると、私には重なって見えるのである。

 こうした本質に出会って、私は、これからの自分事として、農業の深さを実感しつつ、農業のあり方にどう関わるかを自分に問うている。

 そして、本書は、最終的には、
日本農業の未来をむやみな大規模化でなく、自然栽培の発展に見ていて、
高価格でも低コスト・高品質で安全な食の提供が、日本農業の生き残る道である、
としている。

 私の場合、”持続可能な農業” 模索の中に居るが、三大テーマは、1) 和製ダーチャ的地産地消、2) EM (有用微生物群)の活用、3) オランダのスマート・アグリからの学び、だ。

 こうした観点は、要するに、持続可能な有機栽培の効率化の方向である。
考え方自体は、自然栽培に親近感がある。

 それゆえか、この書の基本的考え方と提案に、私は強く共感したのだった。



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