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2016年4月 6日 (水)

「生成的」 ということ

 先日、工学部の国際教育センターに赴任した修了生とやりとりした。
彼女の専門は英語で国際理解教育の実践者だったが、現在直面している課題は工学部の国際化(グローバル化)である。
 そこで取り組みたいのは、最強組織が対話しあうことで成長するグローバル人材の育成であるという。

 切り口として私たちの問いとなったのは、そもそも、工学系の科学者である P.センゲ が今日の思考形態 (学習する組織、対話、システム思考、U理論 等) に傾いた理由は何か? ということだった。

 つまり、既存の科学的分析では物事の本質を捉えるのに限界があるとはどういことか? ということである。
 私たちは理系の科学者ではないので、かなりの部分を想像しなければならない。

 まず私に浮かんだのは、アダム・カヘン 『手ごわい問題は対話で解決する』 で読んだ次の記述である。
 ここには、A.カヘン のシェル時代の同僚である アラン・ウォーターズ の言葉として、複雑なシステムで変革を生み出すことについて、次のように書かれている。

 「問題を解決する」 とは、暗に、その問題を客観的に調査し、故障した自動車の原因を把握するように機械的にコントロールする、という意味合いを含んでいるが、それではうまくいかない。
 問題は、私たちが反応することで直せる単純な存在ではなく、内臓が体の一部であるように、私たち一人ひとりが一部となっている 「問題状況」 として存在している。
 私たちは、その状況に影響を与え、それは、さらに私たちに影響を及ぼす。
ゆえに、私たちにできる最善のことは、問題に多角的視点から取り組み、アクション・ラーニングの方式で、改善しようと努力することだ。(p.159)

 ここから、A.カヘン は、この世界はあまりにも複雑で、相互依存が高く、急速に変化しているため、今起こっているすべてのことを論理で説明することはできず、私たちは、もはや今起こっていることすべての 「意味を理解する (making sense)」 だけでなく、同時にそれを 「感じ取らなければ(sense)」 ならないとしている。
 また、そのためには、私たちはより深遠で、非合理な、古代における知のようなものに意識を向けることが求められる。(p.160)

 『手ごわい問題は対話で解決する』 は、次の章で、複雑系科学の第一人者 ブライアン・アーサー (サンタフェ研究所) をキーとなる人物として紹介している。

 B.アーサー は ”科学的なイノベーション” はいかに起こるかを突き詰めて、次のように言う。
 良い科学者は日常の問題を解決するときに、問題に既存の理論を当てはめ、その理論を使って解決策を導く。しかし、このアプローチは突破口を創り出すことはできない。
 一方で、偉大な科学者は、問題を熱心に研究し、”その問題の横でキャンプをしながら” 直感的に洞察を行う。

 つまり、真のイノベーションにおいて、”ひらめき” とは、その問題に取り組み、話し合うことから生まれるのでなく、一歩下がることで、私たちの ”無意識” が働く余地を与え、答えに耳を済ますときに起きる、と。

 このあたりは、一種の哲学 (考え方) でもあるので、理系の科学者ではない私にも理解できる気がする。
 わからない科学者がいるとしたら、その人は 「普通の良い科学者」 あるいは失礼ながら凡庸な科学者だろう、、とも。(^-^)

 このあたりのセンス (インスピレーション) は、Uの字を掘り下げる場合にも関わる。
 Uの字の底にある ”プレゼンシング” (「存在する」+「感じる」 の混成語)で、「源につながる」 という感覚である。
 イノベーションの「ひらめき」とは、人知を超えたものと私は思う。

・・・


 こうした原理を踏まえれば、工学系で 「学習する組織」 や 「U理論」 は受け入れられる余地がある。いや、受け入れられなければならないというのが私たちの結論になる。

 さらに、P.センゲ のアプローチは、組織を一個の生きたシステムと捉えるシステム思考アプローチである。

 そして、学習する組織は、人は旧来の思考 (メンタルモデル) を脱して、自分が大切だと思うことを達成できるように自分を成長させ (自己マスタリー)、メンバー個々のビジョンとつながる未来像 (共有ビジョン) によって、協働し (チーム学習) 、未来を創造する能力を絶えず充実させていく。

 ここに、工学系の国際化 (グローバル人材の育成) の土台があるとすれば、素晴らしいことではないだろうか?

 彼女の研究を心から応援したいと思う。(^-^)

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