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2015年6月25日 (木)

弁証法超入門

 6月は、開発教育ファシリテーター講座 (アドバンストコース) の内容を紹介しながら、ホールシステム・アプローチのワールド・カフェを事例として、高度化したファシリテーション (ダイアログ・ファシリテーション) の学びを公開してきた。
 それは Generative facilitator への道。。
 ここには 2つの隠し味 がある ・・・ ○理論と ○○法だ。

仰々しく ○で隠したが、U理論は既に公開済み。(笑)
→ おぬきBlog 広場の日常 : 「U理論超入門」
http://bit.ly/1BWplvm

  今回は、もう一方の 「弁証法」 について、入門編として整理した内容である。


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● 弁証法超入門

AD7期の皆さま
 通常コースの「開発教育ワークショップ」の時間に、模範授業を実践することについて、実践チームを募集しましたが、
 次に、ADコースの第二の隠し味である「弁証法」について整理します。

 これも通常コースががからみますが、先週の第9講 (6/17) は 「水は誰のものか? 川は誰のものか?」 をテーマとした 政経学部・関准教授の講義でした。
  11期生は、昨年度、先生の 「自由貿易の功罪」 を受講しているので、記憶にあることと思います。

 先生は、故宇沢弘文氏との共同研究で知られている方ですが、実は、弁証法の研究家でもあります。その点で、私たちは2人は意気投合しました。

 さて、先週の授業では、弁証法の事例として、水の問題が提起されました。
参考文献は 『社会的共通資本としての水』 (花伝社、2015) です。

 通常コースのMLに私はこう書いて、社会問題への取り組みで関先生の弁証法の方法論を見逃さないよう、注意を喚起しました。


> ここでは、関先生の問題意識の根底にあるところを理解しておきましょう。
> (ファシリテーターとして、知っておくべき 「ものの見方考え方」 として)
>
> 例えば、水道事業のあり方の事例ですが、公営事業と民営事業があります。
> 公営に問題があるので、民営化が進められたが、ここにも問題があるのです。
> これが「二項対立の矛盾」を見据えるものの見方です。
>
> 関先生にはこの見方がハッキリあるし、通常の社会問題を考える基本です。
> そこで、ふたつのメリット・デメリットを検証して、考察していきます。
> そして、その結果として、どういうあり方が望ましいのか結論を出します。
>
> 結果、ワークショップの場では、「誰がどのように」 が問いとなっています。
> 先生は非常に親切な方で、その思考のプロセスを問いに込めて下さっていますね。(^_^)
>
> さて、大切なのはここからです。
> 著書 『社会的共通資本としての水』 を読むとわかりますが、
> 関先生の問題意識は 「ではどちらが良いでしょう」 と聞いているのではないのです。
>
> どちらが良いか?は、ディベートの世界です。
> ここにはどちらかの結論は出ても何ら新しいアイディアは生まれません。
>
> 関先生は (弁証法として) 「誰がどのように」 のアイディアを聞いているのです。
> 皆さんから、「第三セクター」 「ハイブリッド」 のアイディアが出たのは、とても良かった
> と思います。時間があれば、もっと深まったはず。
>
> 共通のメリットを (言わば) WinWinで考え、
> その上で、デメリットを克服した解決策とは? を代替案として提案する。
> これが関先生の社会を良くするための姿勢と思われます。
>
> 私は合宿でちょっとだけ触れたかもしれませんが、
> アドバンストコースで扱うヘーゲル弁証法の一端が今回の講義に現れていたのです。
> 弁証法哲学は有名ですが、その具体的な事例が昨日の講義でした。
> 「正」→「反」→「合」 となる螺旋状の社会発展の 「合」 を考えたのでした。


 このメール内容で分かるように、ダイアログと弁証法は密接に関連しています。
素晴らしい授業だったし、むしろADコースにふさわしい内容だったので、私は、ADコースの授業の中で、もう少し詳しく紹介するつもりです。

 さて、弁証法に関して初心の方のために、もう少し別の例で解説しましょう。
私たちになじみの教育における 「二項対立の矛盾」 を例に。。

 教育における根本的な二項対立は 「知識重視」 か 「思考重視」 かに現れていますね。
教育の歴史は、この両極端を揺れ動いてきたと言っても過言ではありません。

 つまり、戦後の教育では、アメリカ流の総合学習で、参加型の調べ学習が中心でした。
そのうち、それでは知識不足で学力が身に付かないと対立する教育論が生まれ、知識重視の注入教育に変わっていきます。(その悪例が受験教育)

 しかし、こうした詰め込みでは本当の学力につながらないとして出てきたのが、ご存じの  (いわゆる)  「ゆとり教育」 でした。
ゆとり教育は、今では色々批判されますが、考える力(思考)を重視した教育だったわけですね。

 弁証法的には、こうした現象を、「否定の否定による発展」 が起こっているとみます。
戦後の思考重視に戻っただけのようですが、実は螺旋状に発展しているのであって、決して元に戻ったわけではないことが重要です。

 この 「否定の否定による発展」 は法則とも位置づけられており、教育は 「否定の否定による発展」 が再び起こるはずです。
これが、今日の、知識重視に戻ったかに見える現象。
けれども、単に戻ったのでなく、発展はしており、今日の教育は、「基礎学力」 重視と 「深い思考力と判断力」 重視を両方踏まえるかたちになってきています。

 つまり、「螺旋的発展の法則」 と同時に 「対立物の相互浸透による発展」 が起こっているとみることができます。
  こうして、弁証法は、哲学上の法則であり、世界観でもあります。

 また、ワークショップの参加者の未来への予見 (洞察) を支援します。
もっと書けば、こんな言葉も味わえます : 「自由とは必然性の洞察である」 (ヘーゲル)

  否定の否定とは、A対Bが、B対A’に変わることです。
弁証法を知らない段階の私たちは、winwinの創発を問題にしますが、
新しいアイディアは、よく考えると 「否定の否定による発展」 という側面が強いのです。

こうした弁証法哲学を、ダイアログ・ファシリテーターの基本素養としたいと思います。
これを 「矛盾の止揚による発展」 と見ますが、ファシリテーターは弁証法を駆使して、参加者の洞察に寄与するのです。

 こうして、winwinアプローチのファシリテーションは、さらに高度化して、矛盾の止揚 (アウフヘーベン) のファシリテーションとなります。
ここでは、ファシリテーターとしてどんな工夫が必要か? 
こうしたテーマが、ADの学びの実践的課題です。

 少なくとも、様々なワークの手順と問いかけは用意しておく必要があります。
関先生のワークショップのように、サンデル教授の問いかけのように ・・・。

 関先生の授業には、矛盾を止揚するための手立てが見事に組み込まれていました。
それがワークになって、提供されていたのです。
素晴らしい!

 なお、弁証法は、ダイアログを通して U理論ともつながります。
U理論では、ファシリテーターはダイアログの文脈を保つことで、アイディア生成に寄与しますが、先の弁証法と連動できれば、最強のツールとなるでしょう。

  敢えて定式化すると、Uの字の左側の下りが矛盾の検証、底で止揚の検討、右側の上りで螺旋状の進化が連動する、これがADコースの学びの仮説です。

 今回は以上です。「学びの道標」 となるべく努めました。
弁証法を面白いと感じていただけたら幸いです。

 学びの道は続きます。今後とも、共に学びましょう!

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