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2014年8月 8日 (金)

スペインな人たち2014(その4)

 スペインの文化にふれ、ベンポスタ子ども共和国を訪れた今回の旅の追想の最後は、焦点であったベンポスタ子ども共和国について。

 ベンポスタについては、村田栄一著 『生きているこども共和国』(風媒社、1991) に詳しい。

 シルバ神父の 「解放の神学」 に基づく教育実践はデューイの子ども主体の教育に重なるものであり、同時に、開発教育そのものと感じた。

 たとえば、ベンポスタの教育の基本目標は、「変革者を育てる」 ことにあるという。
 シルバ神父は、社会変革構想の基本はキリスト教原理による 「信仰」 「希望」 「慈愛」 であることを説き、独裁政治に対する民主主義、物質主義に対する精神主義的経験の重要性を説いていた。(『生きているこども共和国』 p.222)
 そして、ベンポスタ子ども共和国の育てる 「新しい人間」 とは、苦しんでいる人たちに共感を持てる人であり、飢餓の子どもたちからパンを奪っている現実を直視し把握できる人間である。(同上書 pp.180-182)
 結果として、ベンポスタの理念は、そのサーカスでも 「強い者は下に、弱い者は上に、子どもはてっぺんに」 という人間ピラミッドに表現された。

 こうした理念は、「公正で共に生きることをねらいとする教育」 である開発教育から見ると、宗教的色彩を別にすれば、まったく違和感のないものだ。

 私が今回見届けたベンポスタ子ども共和国は、近年徐々に子どもたちがいなくなり、閉鎖状態に近い状況となっていた。
 もちろん子どもたちは夏休みにもかかわらず居たし、サーカス芸の一端も見せてくれたが、過渡期にあることを痛感させられた。

 この現実は、時代の流れによるものと推察できる。
 
 「サーカス」 と 「学校」 を魅力として、一時は100人をゆうに超える共和国であったベンポスタも、今や 「サーカス」 はともかく 「学校」 機能は教育の機会拡大の時代にそぐわないものとなった。

 けれども、それでも大勢の関係者が集まってきて私たちを歓迎してくれたことに、ベンポスタ子ども共和国の蓄積されてきた底力を感じた。
 過渡期にあるベンポスタの未来への力を感じた。

 晩年のシルバ神父は、新しい 「まち」 を創る構想を述べていたという。
 それを受けてだろうか、ビリャールやトニーの頭には、新しい 「まち」 の拠点となるであろう 「平和公園」 構想があると聞いた。

 私はそうした構想に賛同する。
 サーカスや新しい農業樹立でベンポスタ理念を継承しながら、地域にある諸活動と連携し、地域の拠点となって 「ベンポスタ子ども共和国」 から 「オレンセ地域共同体」 の新しい 「まち」 へと進化する。
 そんなコミュニティの方向性を私はイメージしたのだった。

 過渡期にあるベンポスタ子ども共和国を応援しながら見守りたいと思う。
 新しい 「まち」 は世界のローカリゼーションのモデルとなることを期待している。そして、私たちは日本の地域づくりで、そのモデルと連帯したいとも思うのである。
 そうしたネットワークは、これからの未来を開く ”公正” と ”共生” へのインスピレーションを共有し、平和な世界を築く足元からの活動でもあるはずだ。

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コメント

改めてシルバ神父の理念を思い起こすことができました。ありがとうございました。神父の思いを知り、それを受け継ぐトニー達に是非頑張って欲しいと、声援を送りたいと思います。

小生、Spainに住み始めて8年になりますが既に60を過ぎ、欲も少なくなると肩の力も抜け、むしろ何かここSpain、Granadaの街、地域に役立てる様なことをしてみたい、等と考える様になりました。大層なことはできませんが、自分が日本人であることを活かした何かができれば、と。

そこで始めたのが柔道と教会のコミュニティー活動。
柔道とのきっかけは、日本の文化、精神(礼節、謙譲、敬う心)に強い感心を持っているという道場主との出会いから。10歳以下の幼年期の子供達、10代の若者達、そして20代、30代の筋肉マンの様な青年を相手に汗を流しています。
「心、技、体」の精神も、徐々にですが理解してもらえるようになってきました。特に技が上達し夫々の大会でも上位の成績が残せる様になってきた若者達が真剣に捉えてくれる様になったことは、一番の喜びです。
今年11歳になる息子も一緒に道場に通い今年で6年目。今の彼の目標は2020年の東京オリンピック。そのためにはもっと練習を重ね、精神面も含め強くならないと、と親子二人三脚で頑張っています。

教会のコミュニテイー活動は一人の神父さんとの出会いから。彼の慈愛の精神に触れ、そしてキリスト教の考え方を実にシンプルにわかり易く説いてくれる彼の姿が、小生同様近隣の人達にも共感を呼び、日曜のミサはいつも教会の席が足らなくなるほどに。年配者だけでなく若い人達が沢山参加するミサは、他の地域から参加された人達には驚きにも近い共感を与えている様です。週末は子供達や若者が沢山集まって教会に活気がでてきます。

カトリック信者ではない小生ですが、神父さんや教会コミュニテイーの皆さんに心よく受け入れて頂き、俄かカメラマンの腕を活かして「教会広報マン」を自認しながらお手伝いをさせて頂いています。
息子も「Monagillo」としてミサを執り行う神父さんのお手伝い役、日本流に言えば「小坊主」として頑張っています。

日本人としての誇りを大切にしながら、陽気でOpenなSpain人のいいところを一杯吸収して、これからも「いい歳を重ねていきたい」と願う毎日です。
大きくを望まず、着実にできることから一つずつSpainの社会に役立てることができれば、と願っています。

椋木さん、スペインからのコメントありがとうございます。
スペインではほんとうにお世話になり、感謝しています。

自分のこの眼で見ることで、私はベンポスタの真髄に触れることができたように感じています。
自分がこれまでライフワークと考えてきた開発教育と重なり、かつそれを強化するものであったことが、今後の私の指針となりうると感じたのでした。
そして、私にとっても、新しい 「まち」 づくりが今後のテーマとなっています。

人生は出会いですね。
良い出会いをいっぱい得て、そこにある普遍性を信じ、共に喜び、共に悲しみながら、共に何かを創り上げていきたいものです。

椋木さんの柔道・道場主、教会・神父との出会いにも幸あれ。
そして、息子さんと二人三脚での東京オリンピックへの挑戦、応援しています!

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