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2014年3月11日 (火)

ジェネレイティブ・ファシリテーターとは

 先日、今年度 「開発教育ファシリテーター講座」 のアドバンストコース (第10講) が終了した。2月15日の大雪で延期された振替授業だった。この最終講義は、アドバンストコースのまとめを兼ねている。

第10講 (理論編第5講) のテーマ : 「ジェネレイティブ・ファシリテーター論」


1.チェックイン

 授業は、このテーマの共有から始まった。
generative とは、「生成する」 を意味する generate の形容詞形。
では、何が生成されるのか?

 講座の趣旨は、開発教育ファシリテーター養成である。
基本は 「教育ファシリテーション」 であり、たとえば教師は、learning facilitator であることが問われている。
では、generative facilitator とは?
ここでは、教育論に踏み込む共有が不可避である。



2.learning facilitation の授業論

 そもそも、私たちのめざすものは、教え込みでない 「深い学び」 であり、それを支援するツールがファシリテーションである。

 この 「深い学び」 を、開発教育では、発達段階に応じて 「深い共感(共感的理解)」 や 「深い気づき(構造的認識)」 としている。
 また、「知って~考えて~行動する」 ことを旨とする開発教育では、深い共感や気づきに達する深い学びは、自己変容の学びでもある。

 そして、こうした学びは、一斉授業ではなく、協同的な学びによって実現する。
単独で獲得する知識レベルではなく、皆で協働し生成する集合知が問われる。
これが、今日問われている 「変化への対応」 を含む 「学ぶ力」 にほかならない。

 こうした見地に立つ私たちは、基本的に、いわゆる 「学びの共同体」 の学習論に賛同している。
「学びの共同体」 では、まず聴きあう関係性、次に対立を大切にできる話し合い (学び合い) が重視され、そこから課題への取り組みが生まれる。

 私たちと共通するキーワードは、「ダイアログ」 ・ 「学習する組織」 だ。

 特に、協働学習で共創を生み出す 「ダイアログ(深い対話)」 が重要。
ジェネレイティブ・ファシリテーター による生成とは、そうした学び合いの場の生成であり、そこでのダイアログから、共創(生成)される創造性ゆたかなアイディアが重要である。

 こうして、教育におけるジェネレイティブ・ファシリテーターは、「(生成的) ダイアログのファシリテーター」 であり、授業との関連では、「学びの共同体」 のファシリテーターが (生成的) ダイアログの方法論を獲得した姿となる。

 では、いかにして、「ジェネレイティブ・ファシリテーター」 になれるか?

 このアドバンストコースは、世界のワークショップ手法であるホールシステム・アプローチ (ワールド・カフェ、AI、フューチャーサーチ、OST) のファシリテーターのレベルに達することを目標に学んできた。

 具体的には、世界のワークショップを数多く経験している香取一昭ゲスト講師直伝のワークショップから、スキル主義とは一味違うファシリテーターとしての奥深さを感じ、その秘訣を学び取ろうとしてきた。
  そして、ホールシステム・アプローチはダイアログが前提であることから、ダイアログとは?、ダイアログ・ファシリテーターとは?、を学ぶことに注力している。


3.グループワーク (その1)

 グループで、私たちにとってのホールシステム・アプローチの意味と実践上のジレンマを語り合った。

 意味は、ダイアログ (深い対話) を通して、「深い学び」 に寄与するということ。
ジレンマは、
(1) 長い時間が求められていてトライしにくいこと
(2) アレンジが必要だが、難しいこと

 ここで話題となったのは、ワークショップのコンテキストに関わること。
 ホールシステム・アプローチのワークショップは準備に大変手間をかけなければならない。つまり、「段取り9割」 で、準備次第で成否が決まる。
 対象、テーマ、ねらい、そこでの問いなど、ワークショップのコンテキストに関連する事柄を 「産みの苦しみ」 として学ぶことなしには、実践への道は遠いと言わねばならない。

 授業では、実践の場や、時間をかけた学び(合宿) の必要性が話し合われた。
さらに、そうしたことを求める受講者の中から、「裏ゼミ」 や 「自主ゼミ」 をしよう、という機運が生まれたのだった。



4.グループワーク (その2)

 次に、開発教育でホールシステム・アプローチをいかに
実践するかに関して、その授業のデザインを話し合った。

 開発教育のテーマ例は次の12テーマである。
(1)子ども、(2)文化、(3)食、(4)環境、(5)貿易、(6)貧困、(7)識字、(8)難民、(9)国際協力、(10)ジェンダー、(11)在住外国人、(12)まちづくり。
 対応するホールシステム・アプローチのデザイン要素は次の通り。
(1)テーマ、(2)対象、(3)ねらい、(4)流れ、(5)問い、(6)工夫のポイント。
 結果、3グループの選択したテーマは、1)過疎化、2)給食、3)ファシリテーター育成。

 時間不足で深める問いの立案は難しかったのだが、工夫のポイントが興味深かった。
1)過疎化グループからは、AIによる住民へのインタビューで、地域の良い所をポジティブに共有しながら協働に参加していくこと、同質のステイクホルダー同士の話し合いから始めて、その専門性を次のグループに生かしていく工夫
2)給食グループからは、現状分析をAIで、歴史から未来のあるべき姿をフューチャーサーチでといった手法のミックスの工夫
3)ファシリテーター育成グループからは、テーマ別に授業デザインを確定し、必ず実践することで身につけていく工夫
などが構想された。

 重要なのは、こうしたコンテキストと実践の積み重ねである。同時に、「ホールシステム・アプローチ 虎の巻」 ともいうべきテキストの必要性を痛感した。


5.共有する物語(※1)の力について

 最後に、「物語の力が社会を変える」 という番組 (NHK 「クローズアップ現代) からの学び。
 バラク・オバマの選挙参謀として、大統領就任へのムーブメントを作った仕掛け人、マーシャル・ガンツ氏(ハーバード大) の Community Organization学 を共有。

   その根本は、人びとが行動を起こすのは理念ではなく、感情に響いたときであること。大事なのは、自分を突き動かす動機で、その根底にある価値観を言葉で表し、共有するということ。

  協働へのムーブメントの原理は、self (自分ごと) から us (他者との共有) へ、そして us から now (いつ動くか) へ。 (※2)
   この原理は、ダイアログの神髄である「共感」して「共有」し、相手の言葉が自分ごととなることと通底している。ここには、ダイアログ(深い対話) が機能している。

※1 AIのプロセスはストーリーテリング (物語の共有) を基本としている。
※2 OSTの創始者ハリソン・オーエンはOSTの基本哲学を 「今(now)を広げる」としている。


 さらに、ダイアログでは、深い対話の結果として共創 (新たなパラダイム) が重要。
俗に言う WinWin だが、ここでの共創はより創造的なものと言えるだろう。
・・・ これからの教育に必要なのは、競争力ではなく共創力 と言わねばならない。

   私たちはここで、先月の「開発教育ファシリテーター講座10周年記念イベント」でのワークショップ 「聴き訊き場」 に思いを致し、共通点を探った。
そして、その要素は 「ダイアログ」 であることを確認した。
  私たちは11年目以降の新たな再スタートを切っている。そのテーマは 「ファシリテーションの進化」 であり、「ダイアログ・ファシリテーター」 のあるべき姿である。



6.ふりかえりシート より (チェックアウト として)

声A : これまでやったホールシステム・アプローチのふりかえりになったと同時に、それをいかに実践 (output) していくか、その難しさを改めて考える機会になった。話し合いで出た点を今後の宿題としていきたい。
   1年にわたる学びのプロセスは貴重な機会。改めて 『学習する組織』 を読みたい。

声B : ホールシステム・アプローチを理論面から整理できた。その中で、まだ表層的な理解しかできていない自分に気づかされた。受講者が感じている実践の場の必要性を自分自身も痛感した。小さな実践でも良いので、自分で重ねていきたい。
 多様性を大切にするホールシステム・アプローチは改めて現代の日本では必要とされている気がする。競争よりも共創を重んじる教育へと変容していくことも求められる社会。そこに生きる者として、しっかりとファシリテーションに向き合っていきたい。

声C : 私が好きな佐藤学の 「学びの共同体」 と拓大アドバンストの目指すものが重なっていて嬉しい。自分のいろいろな場での学びがひとつの軸になっていく。
  「手法ありき」 には限界を感じる。ここで学んだ要素を、自分がいる場で、どう活かしアレンジするかが大切だと思う。

声D : 1年間ありがとうございました。昨年度に引き続き、この講座で学ぶことができ、たくさんの出会いがあったことに感謝したいです。
 アドバンストで学んだホールシステム・アプローチを自分の ”モノ” として身につけていきたいです。

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