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2013年11月 1日 (金)

ホールシステムアプローチと国際協力

 開発教育ファシリテーター講座 (アドバンストコース) 第6講のテーマは 「国際開発と方法論」。第4講で体験したワールド・カフェをはじめとするホールシステム・アプローチを方法論とした国際協力について考えた。

 講義は第5講でやり残したワールド・カフェの再検討から始め、そのワールド・カフェを方法論とした国際協力について考察している。

 ちなみに、ワールド・カフェはホールシステム・アプローチの最も普及している対話の手法だが、ホールシステム・アプローチは他に AI (アプリシエイティブ・インクワイアリー)、フューチャーサーチ、OST (オープンスペース・テクノロジー) 等を含んでいる。
 これらは今年度も順に学んでいくのだが、現段階の受講者はワールド・カフェを事例とする段階である。

 実は10月末に海外での実践が講座全体のMLに報告されている。
パラグアイにJICA日系社会青年ボランティアで赴任中の協力隊員(村落開発)によるフューチャーサーチを実施した報告だ。曰く。
  「地元日系人世帯を対象に、『ラ・コルメラ日系社会の将来を考える』と題した全3回のワークショップをプログラムを実施。・・・
 ”過去””現在””未来”の3回に分け、それぞれのテーマについて参加者で話し合った。そして最後には十年後のラ・コルメナの目標を共有し、それを実現するための手段について考えた。・・・
 これによって、地元の人が考えるコルメナの課題と希望が具体的に見えてきた。この成果を絵に描いた餅に終わらせず、具体的なプロジェクトに反映させ、それを実行していく道筋を作るところまでが私に残された仕事である」

 彼は一昨年度のアドバンストコース受講生である。
さっそく、国際協力の場で講座の内容が生かされることは、スタッフとしてこの上ない喜びというしかない。
 このあとのプロジェクトでは、きっとOST (オープンスペース・テクノロジー) が活用されることだろう。

 そして私の希望は、こうした自立のためのホールシステム・アプローチを他の手法を含めて伝え、現地に主体的活動に寄与できるファシリテーター仲間を育ててほしいということである。


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 さて、ビッグニュース紹介で前置きが長くなったが、当日のメニューは以下の通り。
1 ワーク1 : ワールド・カフェの再検討
2 ワーク2 : PCM(プロジェクト・サイクル・マネジメント)手法
3 ワーク3 : 国際協力におけるホールシステム・アプローチ

 以下、ふりかえりシートの声にふれながら、まとめておこう。

1 ワールド・カフェの再検討

 ワールド・カフェは素晴らしい対話のツールだけれど、ともするともうひとつ深まりきらずに終わる傾向もある。それはなぜだろうか?

 これについては、前回の第5講で、ダイアログを深みに導く 「問い」 の難しさを認識しつつ、特に、各ステージにおけるテーブル・ホストの (介入ではなく促進をめざした) ファシリテーションのあり方、TR (テーブルレコーディング) の工夫、その他、テーブル・エチケットとしてのグランド・ルールをどう改善できるか、が課題にあがっていた。

 つまり、そもそも 「問い」 が適切かを肝に銘じながら、テーブル・ホストによるダイアログモードの維持 (ディスカッションモードとの区別) だけは最低限必要であること、TRは決していたずら書きにとどまらず、もう少しFG (ファシリテーション・グラフィック) の要素をもつよう工夫すること。そして、こうした改善がテーブル・エチケットに反映することである。

 これらが実現した上で、最終ラウンドは収穫する実りを意識する。各ラウンドでUの字を下った成果としての収穫とは何だったかが問われることになる。

 授業では、これらに対して、具体的な提案がさまざまに出た。

 まず、心の底を掘る場を保持する問いの必要性。その問いは心に響く大きな価値観に関連して方向性を共有できるものであるように一層工夫すること。
 テーブル・ホストは、最初にその問いを問い直すここを含めて、ダイアログモードを維持するべく ”もてなす”。ここにUの字に深まるダイアログが期待できる。
 TRでは、単なるいたずら書きの奨励でなく、ポストイットを用意して書いてもらいながらFGを楽しんでもらうことが有効ではないか? 他花受粉の移動で前のラウンドをうまく説明できるようにメモ書きを奨励するのもありではないか?
 そして、最終ラウンドは、何を収穫するかが問われるが、その成果はワールド・カフェの前後の展開も含めて総括することが望ましい。成果と課題を共有することで納得感が高まるだろう。等々。

 ここで出てきた改善の工夫はすぐに実践できるだろう。いわば、IDEC(国際開発教育センター)流である。(-_-)
 ただし、ここまで、テーブル・ホストのもてなし方に一定のレベルを求めると、テーブル・ホスト役は事前に決めておく必要があるかもしれない。これは望ましいとは言えないが、初めての体験者の集まり等では、こうしたパターンもありうるということになった。

声 : 「課題は、心の底を掘る場=場を保持する問いとホストのあり方」

2 PCM (プロジェクト・サイクル・マネジメント) 手法

 ホールシステム・アプローチと対比するために、JICAの手法であるPCMを体験した。
ここでは、関係者分析~問題分析~目的分析~プロジェクト選択の流れを概観し、問題分析 を行った (ワーク2)が、同じ事例でもグループにより中心問題が分かれたことが興味深かった。
 つまり、現実的な問題を軸とするのか、根本的問題を軸とするのかで分かれてしまうのが問題解決アプローチの難しいところで、まさにその難しさが現れたことになる。
 現実は、予算・期間・実施可能性等を多面的に考慮してプロジェクトにつなぐことになるが、どうしても恣意的になることは避けられない。

声 : 「PCMの手法で、一方のチームは現象を中心問題としてとらえ、一方は本質的な部分を中心問題としてとらえていた。前者をベースとしたプロジェクトは対処療法となり、後者をベースとしたプロジェクトは根本療法となる。両方必要だと思うけれど、今の世の中は前者の方が多くなりがちで、後者にもっと目をむけることを意識した方がいいと思った」

3 国際協力におけるホールシステム・アプローチ

 次に、同じ事例に対して、ホールシステム・アプローチで取り組む体験。(ワーク3)

 その結果だが、関係者分析では、参加者は可能な限り当事者全員である。
そして、問題分析~目的分析では、問題解決アプローチではないことが確認された。

 ホールシステム・アプローチの問題分析~目的分析は、問題解決アプローチではなく、ポジティブ・アプローチをとる。
 問題を問うのではなく、夢や未来を語り合うことで、そこに向けてのモチベーションを高めることが肝となる。

 それは、話し合いにおける問いに現れる。
当然のごとく、ここではグループ間の差異はほとんどなかった。
→R1の問い 「住みよい町の交通手段とはどんなものでしょう?」
→R2の問い 「そのためにすべきことは?」
→R3の問い 「そのサービスのために必要なことは?」

 授業参加者はすでにR(ラウンド) に応じた段階的な問いのパターンをマスターしていた。
最終段階で、「そのための最初の一歩は何でしょう?」 とするともっと具体的になるだろう。

 こうして、ホールシステム・アプローチによる国際協力は、原則として全当事者を集めてのポジティブ・アプローチで、自分事へのモチベーションを高める方法である。
 参加型開発というとき、そもそもニーズは誰のものか、誰が参加するのか等々、参加のしくみが考慮されなければならない。そして、問題解決アプローチのジレンマや恣意性を超えなければならない。
 ここにおいて、ホールシステム・アプローチは、自立のためのアプローチとして極めて有効であると思われる。

声 : 「PCM手法は現実重視の面が強く、国際協力を提供する側の恣意性が働きやすいが、ホールシステム・アプローチならポジティブ・アプローチで未来志向型の特性を生かし、参加者(当事者)の参加意識を醸成しやすいと気づかされた」

声 : 「未来志向の問いによって対話が活発化するということを、3番目のワークで体感できた。最初の問題解決型の問いかけから始めようとしていたところを、未来志向型の問いを考えるという場に変えただけで話し合いがより活発化したのを感じた」

声 : 「人はロジックでは動かない、夢やモチベーション、感情に動かされるものだ、ということは、自分の現場でもその通り。問題解決の話し合いさえも、Positive に夢を語ることから入れると分かったのは大きな収穫だ!」

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 二次会は懐かしの居酒屋で、ワールド・カフェならぬ ”ワールド・居酒屋”。
 日本はカフェより居酒屋が実感。”ワールド・喫茶店” 説までからんで日本文化論で盛り上がりましたぞ。(笑)

 

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