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2013年11月28日 (木)

AI (アプリシエイティブ・インクワイアリ)

 開発教育ファシリテーター講座 (アドバンストコース) 第7講は Appreciative Inquiry (真価を評価する探求) の体験的学びだった。講師に香取一昭氏をお迎えしての2回目。この手法はポジティブ・アプローチの代表的手法であり極めて興味深い。その概要と考察をまとめよう。

 
 チェックインで 「最近嬉しかったことは何ですか?」 を共有するところから始まった内容は以下の通りである。
◇ 解説(1) AI の概要
◇ AI インタビュー体験
◇ 解説(2) AI についての追加説明
◇ Q&A、チェックアウト


1 解説(1) AI の概要

 AI は 「真価を正当に評価するための探求」。個人や組織が本来持っている価値や未来を重視し、欠陥や問題ではなく、強みや可能性に注目する。
 まず、内発的な動機を重視して内包する問題解決能力や生命の活力を大切にする可能性探求アプローチ(ポジティブ・アプローチ)をもうひとつの問題解決アプローチ(ギャップアプローチ)と比較検討した。
 「問題」 と 「可能性」 はコインの裏表であり、「本当は何を実現したいのか?」 「どんな状況が望ましいのか?」 を共有することこそが理想的未来を実現するための力を生み出す源泉となることを確認。

 AI の流れには4つのサイクルがある。(4-Dサイクル = Discovery-Dream-Design-Destiny)。
 すなわち、活力の源(ポジティブコア)の発見~ありたい姿を思い描く~実現のための諸要素~チームづくりと行動計画 のサイクル。
なお、企画段階のチェンジアジェンダと肯定的テーマの明確化(Defining) を伴う。(5-D)

2 AI インタビュー体験

 時間の関係で体験できたのは第一サイクルの Discovery である。AI インタビュー体験、ストーリーの共有、「ポジティブ・コアマップ」の作成である。
 ここで留意すべきは、企画段階 (Defining) は既に済んでいることのように思われた。このことは重要なのでこのページの最後の考察で触れよう。

 今回のインタビューのテーマは 「最高のワーク、最高のライフ ~ワークライフ・バランスを超えて~」 であった。
 問いは5つで、それらの要点は、①これまでで 「ワーク」 も 「ライフ」 も充実していた最高の体験、②その素晴らしい体験を可能にした要因、③様々な課題に直面するなかで希望の持てる兆し、④10年後の 「最高のワーク」、「最高のライフ」 を実現した姿、 ⑤その素晴らしい未来を実現するための第一歩。

 体験では、グループで ①から③についてリストーリーし、共有しながら、共通するキーワードを抽出した。
 そして、ポジティブコアをまとめ、「ポジティブコアマップ」 を作成し発表した。

3 AI についての追加説明

 AI とは、人・チーム・組織が最高の状態のときに生命体としての活力を発揮するという哲学を持ち、人びとがポジティブな変革に参加するプロセスである。これによって、ポジティブな変化を持続させ、人びとが望む結果を得ることができる。

 AI に特有の特徴とは、社会構成主義、ポジティブ・アプローチ、継続的探究、より高い所を目指す、価値ベースのデザインである。
 AIの6原則とは、構成主義、同時性、詩的、期待成就、肯定性、全体性。

  また、インタビューには原則的なガイドがある。 場づくりの質問、トピックス関連の質問、 締めくくりの質問である。今回の質問もこの原則に照らしたものであることがわかる。

4 質疑応答 ~ 考察

 既定の時間をオーバーするほどに活発な質疑応答があった。
 その内容は、問題探求をどう考えるか、解の捉え方、参加者の設定、標準の時間(3泊4日)を確保できない場合のフォローアップの仕方、等である。

 これらの応答の概略は以下のように整理できよう。
→ 問題探求: 問題解決でギャップが埋まれば良いのかが重要。より高い所に本当に目指すものがあると考える。
→ 解: 経験の中から未来につながるものを大切にする。
→ 参加者: 原則として全体の構成員すべて。実行計画にトップの後押しは必要。
→ フォローアップ: 一気にアクションチーム結成までいくことが望ましいが、2週間程度の間隔ならフォローアップ可能。

 ふりかえりシートより主な感想は以下の通りだった。
〇 「インタビューの中で、パートナーの達成感を私も共有することができ、そのあとで他のグループの成功体験を聞くことができて、すごく充実しました」
〇 「学校では、よく、問題解決アプローチで授業や課題学習を行うが、可能性アプローチに未来性を感じた」
〇 「AI 最高 ! ! 問いは命だね」
〇 「楽しい時間でしたが、実際の行き詰った職場で、どのような成果が得られるか疑問」

◆ 考 察

 ここでは、第一の質問にあった 「問題探求をどう考えるか」 に関連して、サブテキスト 『ポジティブ・チェンジ』 (Dホイットニー&Aトロステンブルーム) を基に考察しよう。
 「しかし、問題はどうするのですか?」、この質問が AI において最も頻繁に聞かれるものだという。「問題を否定するなんて、非現実的ではないだろうか?」 「問題を無視、もしくはあたかも存在しないように行動することを求めているのですか?」 等々。

 これに対して、著者はこう答えている。
「ここではっきりさせておきましょう。私たちは、もし、状況、関係、組織、もしくはコミュニティを変化させたいのなら、問題に焦点を当てることよりも、強みに焦点を当てる方がより効果的だと言いたいのです」 (p.33)

 香取先生の応答に重なるが、AI の本質は、誰もが最も重要だと考えていた問題 (チェンジ・アジェンダ) をポジティブな未来志向の問い (アファーマティブ・トピック) に転換するところにある。
 それを前提にして、根源的な問いは、問題をいかに解決するかではなく、「もっと望むことは何か?」 に向けられることになる。

 テーマは問題に焦点を当てるよりさらに望むことに焦点を当てること、強みを伸ばすことで弱みを取るに足りないものとしてしまうこと、こうしたことの有効性を本書ではブリティッシュ・エアウェルズでのトピック選択の事例が明確に物語っている
。(pp.139-141)

 ところで、企画する立場での学びでは、Discovery (インタビュー) 体験だけでなく、その準備段階の Defining (アファーマティブ・トピックの選択) が非常に重要なのだが、先に書いたように、講座の限られた時間では体験しきれないことが惜しまれる。
 
 つまり、具体的に私たちが抱えているジレンマに向き合い、そこでの 「問い」 をどう作成するかこそが重要ということである。

 その営みを基礎にして、AI は、話を聴きあう場を設定し、人とのつながりの機会となる。さらに、価値の共有を伴うゆえに夢を共有し、各自がポジティブになることに寄与する。

 こうした理解によって、AI の素晴らしさは一層際立つように思われた。ファシリテーターの抑制的な介入のあり方も学ぶ点が多い。
 そして、私たちにとっての課題は、開発教育の取り組みにいかに引き付けるかが問われる。

 香取先生からの学びを発展的に活かしていきたいと改めて痛感した学びだった。

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