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2013年9月29日 (日)

ファシリテーションとプロセス

 開発教育ファシリテーター講座第15講のお話。「対話の学校」 の吉田創氏をお招きして 「ファシリテーションってなんだろう?」 をテーマにワークショップをしていただいた。

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 吉田氏とはオンラインのTwitterで知り合った仲である。私はオンラインの相互フォローがオフラインでの出会いにつながる経験を幾つかしているが、今回も極めて有意義な出会いを得たことに感謝している。

 さて、ファシリテーションは 「コンテント」 と 「プロセス」 の両面をもっている。
コンテントは内容的側面であり、プロセスはそれ以外、あえて定義すれば関係的過程だ。

 氏の活動を知るほどに、ファシリテーションの両輪であるコンテント(内容的側面) とプロセス(関係的過程) における後者を深める活動に大きな学びの可能性を予見した私は、躊躇なく講座へのゲスト講師を依頼したのだった。


1 事前の打ち合わせとファシリテーションの再整理

 まず、事前にお会いして、そこからの自習(笑) として、ファシリテーションの再整理をしたことから書き始めるのが適切だろう。

 ファシリ講座はファシリテーションの基礎として、次の5つを柱としている。
① 場をつくり、場を読む
② 意見を引き出し深める
③ 流れをデザインする
④ 議論を構造化し整理する
⑤ 対立を解消し意思決定する
 ここで私が発展的理解の必要性を感じているのは、これらをファシリテーションの両輪であるコンテントとプロセスとして再整理することだった。

 私の10年間の講座担当の経験からすると、ファシリテーション・スキルで重要なのは、
☆ コンテントにおける深めるスキル
 (関係づけ思考/深める問い/ずらし/リフレーミング 等)
☆ プロセスにおける場を読むスキル
 (場づくり/関係性構築/集団心理 等)
という両輪にほかならない。

 サンデル教授の 「白熱教室」 でも、絶妙な問答術とともに、場の状況を読み解く力が両輪となっているのである。
 そして、後者こそが 「ファシリテーションの新しい展開」 としてのダイアログ展開の土台となる。

 現状は、当然に、二つの要素を含めているのだが、受講者が理解しやすいようにコンテントを軸に展開してきた。
 むずかしく考える必要はない。たとえば、「場をつくり、場を読む」 のはプロセスそのものである。「意見を引き出し深める」 で ”共感” を重視するのもプロセスの一環だ。また、「流れをデザインする」 際には、参加者の意識に意を用いたり、集団心理の落とし穴に留意したりする。さらに、「対立を解消し意思決定する」 のに、対立をさけるのではなく、何でも言い合える関係性(協調関係) を重視してきたということ。

 ところが、現実として、「流れをデザインする」 ことはコンテンツを深めるプロセス(手順) と混同されている可能性すらある。今回の吉田氏の授業ではこの壁を超えることが当方のねらいだった。

 吉田氏との事前の打ち合わせでは、「プロセス」 という用語が受け入れにくい可能性を話し合った。(もうひとつ 「気づき」 も、開発教育での 「気づき」 と異なっている)
 二人で共有したのは 『人間関係トレーニング』 (ナカニシヤ出版、1992) の内容。私の場合は、現在活動中の「教育ファシリテーション研究会」で、ファシテーションの先駆者としてクルト・レヴィン(1890-1947) を検討し、日本でのラボラトリーメソッドに注目してから貴重な文献としてきた。吉田氏を高く評価するゆえんでもあるが、氏はこの書がバイブルとのことだった。

 重要なのは、場を読む際に、プロセス(関係的過程)に意を用いること。五感を駆使して、参加者の心の動き等を ”観る” こと。
 もちろん、参加者の心の内は観察の段階では実証されない。それをふりかえりや分かち合いのフィードバックで事実として認識する。ファシリテーターはこうしたトレーニングをすることで、場を深く読む(観る)ことができるようになる。

 さらに、互いに何でも言い合える関係性を築くことは、参加者の主体性をも高める。こうした諸々の効果は、コミュニケーションの質を高め、グループの成長につながる。
 私にとって重要なのは、コミュニケーションの質を高めることが、対話(ダイアログ)の土台を築くということだ。


2 吉田講師の授業より

 授業は導入のレクチャーと体験ワークで構成されていた。

(1) 導入レクチャー

 レクチャーのポイントは、ファシリテーションはグループの成長を支援するものであるということ。ファシリテーターがその力をつけるためには、ラボラトリーメソッドで、体験~気づく(事実の認知)~考える(仮説設定)~試案(支援の選択)~体験、のサイクルをトレーニングするということ。
 その際のポイントは、何が起きているかの気づきで、事実(根拠)と解釈(判断)を区別して認知する姿勢。ふりかえりと分かち合いで認知を深めること。
 そして、ファシリテーターはそうした認知経験の積み重ね (トレーニング) で、ファシリテーターとして成長すること。

 興味深かったのは、質疑応答だった。
 特に集中したのは、プロセスの 「気づき」 において、事実と解釈は違うといっても、その認知は果たして可能かということ。また、グループの成長と個の成長は連動するとは限らないということ、等々。
 このやりとりでは、プロセスを意識することの重要性や状況に応じる対応の重要性が確認された。

 吉田講師にもっとファシリ講座の実態を伝えていれば、プロセスに関してもっと具体的事例で語ってもらえたかもしれない。その点は悔やまれた。
 参加者が戸惑った解釈の違いや誤解の可能性は、ふりかえりや分かち合いのフィードバックで、事実として検証されることが重要なのだが、時間が不足したことも悔やまれた。
 それでも、質疑応答が十分に盛り上がったこと自体が授業の成果と思う。こうしたやりとりは想定していたが、参加者のレベルの高さをうかがい知ることもできた。

(2) 体験ワーク

 時間が押してしまったが、ワークはラボラトリーメソッド体験。4~5人のグループで、「私たちが一緒に学ぶためにできることは何か?」 をテーマに話し合いをもった。
 言うまでもなく、ワークのねらいは、自分の内面、他の人の様子、グループで起きていること (プロセス) を意識して話し合うこと。それをふりかえりで、気づきの検証をすること。

 ここでは、起きている事実はひとつで捉え方は異なることを体験することで、レクチャーの内容を実感する機会となっていた。

(3) 参加者のふりかえりより

 参加者の代表的な声を記録しておこう。

A.「コンテント」 と 「プロセス」 を分けて考えることが新鮮でした。
 ファシリテーションはプロセスに気づくことであるとおっしゃっていましたが、プロセスを事実としてしっかり認識するには時間がかかると思いました。経験を積むことによって、プロセスがしっかりとした事実となる確率が高くなるのではないかと感じました。

B.自分や相手について気づくということはそれを意識して話し合いに参加するのは容易だが、それを適切に判断し、分析・支援するのはまた技術を必要とすると感じた。

C.ファシリテーターは飲み会の幹事に似ていて、楽しくなさそうな人(参加してない人)がいれば、うまいこと(アサーティブ)に声をかけ、場が盛りあがる(話し合いがうまくいく)よう気を配り、陰にひなたにひっぱっていく人なんだなあーと思った。

D.ファシリテーションにおけるプロセスの重要性。
 プロセスを意識するということは、待つ、きくというファシリテーターに重要なポイントとイコールであると思った。

E.コミュニケーションがうまくとれるとれないの背景に関係性があることを意識して、これからは関係性に注力していきたい。


4 所感と感謝

 吉田氏をお呼びして授業していただいたことには企画する側として満足している。
時間不足もあって、今回だけで十分な理解を得たとは言えなくとも、参加者のふりかえりシートには、各人が相応の学びを得ていることが示されている。
 この授業によって、年度前半の学びを再整理する契機を得た。このことは、私の授業でも確認していきたい。

 そして、年度後半のアクティビティ作成やそれを活用してのファシリ実習に、ここで再整理するファシリテーションの両輪を意識することができるであろうことはとても重要である。
 吉田先生、ありがとうございました。

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