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2013年3月27日 (水)

「クロスロード」 とダイアログ

 鬼も苦笑するであろう先月の話題(笑)。第4回「教育ファシリテーション研究会」は、神戸から西修氏をお招きしての 「クロスロード」 体験ワークショップだった。とても刺激的だったので、忘れないうちに、その体験記として私の学びを整理しておきたい。

 防災ゲーム 「クロスロード」 は、必然的に関西で生まれた「ゲーミング」(ゲーム的側面をもったシミュレーション) である。必然的というのは、これが1995年の阪神・淡路大震災ののちに、その実体験を題材として作成されたものだからだ。防災ゲームと名乗っているが、実際は防災というより、大災害時を疑似体験する危機対応ゲームである。
 なお、ゲーミングという名称には、完成したゲームそのものではなく、ゲームを作っていくという能動的な意味合いがあるようだ。

 言うまでもなく、「クロスロード」 の背景には、阪神・淡路大震災の経験を活かした膨大な資料の蓄積と聞き取り調査が潜んでいる。私たちは、大震災を直接体験することができなくとも、このシミュレーションによって、可能な限りのリアリティを伴って、大震災が起こったらどうなるか、どう対応するかを疑似体験することができる。
 私は、まさに、自分の問題として、このワークショップに参加できたと思う。

 危機への対応は、基本的にYESかNOかの判断だ。問いは二者択一なのだが、切羽詰まった時間におけるあれかこれかのトレードオフの決断を迫られる。
 たとえば、最初の例題では、「あなたは避難所の食料担当。被災から数時間。避難所には3000人が避難しているとの確かな情報が得られた。現時点で確保できた食料は2000食。以降の見通しは、今のところなし。まず2000食を配る?」 という難題を突き付けられた。
 YESかNOかを判断したら、そのカードをグループ内で一斉に提示するのだが、なぜそうするのかを自分の言葉で説明しなければならないルール。「同じです」 は許されないので理由を話し合う中で新たな展開になることもしばしば。そのうちに グループ内の多様な考え方を受けて ”文殊の知恵” らしきものがでてくることに内心驚いたりもした。

 奇数者構成のグループで多数意見にミニざぶとんが出たりする。そのゲーム性を楽しんだのだが、ここでは、今回の体験で感じた奥深さについて考察してみよう。

 「クロスロード」 の理論的背景は、サイモンの 「意思決定論」 とデュークの 「多重語」 の理論であり、これはその具体化なのだと思う。
 このゲーミングでは社会的葛藤のなかでの明示的な意思決定が常態であり、参加者は心理的ジレンマを伴った意思決定を迫られる。そこでは主観的即断が問われ、代替案は二者択一に単純化している。これに多重語が加わることによって、参加者は大きな学びを得る。それは互いの意思決定を尊重したうえでの多様性であり、そこから共通の目標に向かっての意見交換の発生だ。

 これがデュークの言う 「多重語」 である。多重語の特徴は創造的であることだ。創造的であることからすると、いわゆる 「リスク・コミュニケーション」 以上のものである。
 何のことはない。「クロスロード」 は ”共創” を生み出す 「ダイアログ」(対話) の一形態なのである。

 「クロスロード」 は極めてシンプルであり、こうした発展的側面をルール化はしていない。しかし、ここでのYESとNOの対立は、多様な対応策(知恵) を導き出すものであって、単なる討議(ディベート)を超えていた。

 YESかNOかの問いからダイアログの世界にいざなう可能性・・・ ここにこそ、私は 「クロスロード」 の凄さを感じたのだった。このことに私は楽しみながら感動したのだった。

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