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2013年2月 6日 (水)

第3回研究会~古典に学ぶファシリテーション

 教育ファシリテーション研究会の第3回は、5人の古典的業績と研究会のめざす教育ファシリテーションとのつながりを確認することをテーマに文献購読を行った。皆で共同研究し多様な視点で検討できたことは有意義だったと強く感じている。ここではその概要をふりかえる。

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●第3回研究会ふりかえり (日時:2013年1月19日、場所:森の寺小屋)

1.ワークショップ(ファシリテーション)の歴史概観

 ワークショップの起源は、1905年のジョージ・ベーカーによるハーバード大学での演劇授業とされるが、ファシリテーションに関する歴史上重要な先駆者は、同時期に学校教育を児童中心にワークショップ化したジョン・デューイである。彼を先駆として、心理学・教育・演劇・まちづくり・ビジネス等の分野でワークショップ・ファシリテーションの歴史的流れを概観することができる。

 心理学分野では、クルト・レヴィンのグループ・ダイナミクスからラボラトリー・メソッドへの流れ、カール・ロジャースのエンカウンターから構成的エンカウンターへの流れが代表的である。
 教育分野では、パウロ・フレイレの銀行型教育批判から課題解決学習(開発教育)への流れ、イヴァン・イリイチの脱学校論からフリースクールへの流れが代表的である。
 今回の研究は上記2分野の代表的先駆者の理論を対象としている。

 その他の分野では、演劇分野でのアウグスト・ボアールからPETAへの流れ、まちづくり分野での1960年代住民参加型から環境デザインの興隆、ビジネス分野の組織改革手法から学習する組織やホールシステム・アプローチへの流れ等を概観することができる。

 これらすべてはいずれも関連しているが、現代のファシリテーションの方向性としては、ファシリテーションの一層の普及とともに、ダイアログとして対話を捉え直す傾向を見いだすことができる。

2.先駆者に学ぶ

 今回の研究は5人の代表的先駆者の古典的業績と私たちが目ざすファシリテーションのつながりを確認することを第一のねらいとしている。更に、教育の2側面を認めたうえで、現実の学校教育の実態に照らして、(教育)ファシリテーターが対応できる手がかりを探り出すことも課題だった。

 ここでの教育における2側面とは 「体系的知識」 と 「探求的思考」 の側面であり、教育における普遍的な2項対立となっていることを意味する。
 ファシリテーションは後者を重視するが、“教えるから学ぶへ” のスローガンが 「生きる力」 との関連で叫ばれて久しいものの、理念上はともかくとして、現実の教育(特に中等教育以上) では受験制度の影響もあって前者に偏っている現実がある。
 このパラダイムの相違にファシリテーターとしての教師は向き合わねばならない。

 このことは、教育実践が、学習者の興味・関心を引出し、確たる基礎知識を前提として 「参加型で深い学び」 をいかに築くことができるかの問いにつながる。
 その意味で、今回の研究はファシリテーターとしての教師の軸を確認するばかりでなく、先達から具体的な方法を学び取ろうと試みるものだった。
 どこまで深めることができたかはともかく、参加者がレポートを持ち寄る共同研究で、さまざまな方法論上のヒントを得た。
 以下、その学びのポイントを列挙する。


(1) ジョン・デューイ (1859-1952)

*『学校と社会・子どもとカリキュラム』 より
・学びとは、子どもが現実との関係で経験的に思考して得るものである。
 = 「為すことによって学ぶ」
・人間は生来活動的で好奇心に富んでいる。
 ゆえに、教育とは子どもの自発的な好奇心に 働きかけることから始まる。
・現実的動機に働きかける学びで訓練されるものは、
 観察・創意工夫・構成的創造・論理 的思考・現実感など。


→ファシリテーターとしての教師は、学びの場づくり(現実的な動機づけ)が重要。
→学びの本体では、現実社会と分断しない教材(仕掛け・ストーリー)が重要。
→学習者の自発性を揺り起こし、活性化させ、自らの経験のうちに訓練されるような場
   を提供し、活動の動機としての問いを働きかけるのがファシリテーターとしての教師。


*『経験と教育』 より
・学びとは経験の再構成である。
 子どもの経験の知的・道徳的発展を通して、個人的価値と社会的価値の調停を図ることができ、
 子どもの 「反省的思考」 による再構成を通してより高次な創造的知性が生成される。
 (5段階の反省的思考 = ①困難の生起、②知的整理、③仮説、④推論、⑤検証)
・過去の経験と現在の問題との間の関連性を発見できることが重要である。
・教材の発端は日常の生活経験の中の材料から始まる。


→事物や出来事をそれ以前に経験した事物や出来事と知的に関連させることが重要。
→教師は、教え込まずに、学習者の観察能力や記憶の知的利用能力を支援する。
→学習者の「なぜそうなったのか」の素朴な疑問を重視する。
  問題の原因は、制度や習慣などを歴史的に検討することが有効である。


(2) クルト・レヴィン (1890-1947)

*『パーソナリティの力学説』 より
・行動は人間と環境の関数であり、「場」 の相互作用として考えることができる。
・人は、「場」 の積極的誘発性に接近し、消極的誘発性を回避する。
・目標の達成、賞と罰 等も大きな影響がある。


→ワークショップという 「場」 は人の内面にアプローチしていることを意識する。
→ファシリテーターはいかに積極的誘発性で興味・関心を引き出せるかが重要。
→Tグループの人間関係トレーニングやアクションリサーチは活用できる。


*『社会的葛藤の解決』 より
・集団が組織として個人を形成する力学が存在する。
・希望に満ちた展望がモラルを高揚させる。
・否定の命令や強圧は著しくモラルを破壊する。


→グループをグループとして見て、その特性を観察することが重要。
→ファシリテーターは、①おだやかで、②友好的で、③自立を促すことを意識すること。
→何よりも、「開かれた心」 を持って対応できることが重要な課題である。


(3) カール・ロジャース (1902-1987)

*『人間尊重の心理学』 より
・グループ内で他の参加者との語り合いや共通体験を通して、
 多くの気づきや変容を得るエンカウンター(出会い) のグループワークが重要。
・人間には自己理解や自己概念、基本的態度、自発的態度を変化させていく潜在力がある。
 この 「人間中心アプローチ」 は、来談者中心療法と同様に生徒中心の授業を含んでいる。
・カウンセラーの促進的態度の条件は、①見せかけのないこと、②受容、③共感的理解。


→ファシリテーターは、カウンセラー的態度で、開かれた体験と人間的成長を支援する。
→学習者の経験しつつある感情や個人的意味合いを正確につかみとり、伝え返すことで、
  学習者の気づきを促す 「積極的傾聴」 およびその場の設定が重要。
→ファシリテーターは、待つと同時に変容のプロセスに関わっている。


*『エンカウンターグループ』 より
・感情や思考の表明をほとんどさえぎることのない純粋な会合が貴重な経験となり得る。
・ファシリテーターは、グループの潜在力を信ずる。
・ファシリテーターは、人間関係を促進して、グループ中心の運営を理想とする参加者。


→参加者の6つの体験とは、①自己覚知、②自己開示、③自己主張、
  ④他者受容(傾聴)、⑤信頼感、⑥役割遂行。(國分康孝)
→傾聴、受容、共感的理解、対決とフィードバック 等が促進的機能のキーワードである。
→教師は「教える」というより「育てる」存在という自覚が重要。


(4) パウロ・フレイレ (1921-1997)

*『被抑圧者の教育学』 より
・社会の根本テーマは 「支配」 というテーマである。
・ 「人間解放」 が教育のテーゼである。
・知識伝達のみの 「銀行型教育」 では抑圧/被抑圧の構図を固定してしまう。
・学習者に能動的役割があり共同的学習が成立する 「課題提起型学習」 が必要である。
・個人や社会の意識的な形成のための手段として 「意識化」 が重要。
・問題解決の道筋は 「対話的行動」 によって実現する。
・本当に重要なのは、社会が何ものにも依存しておらず自立していること。
・被抑圧者の教育は、抑圧者/被抑圧者双方が非人間化していることを発見する学び。
・人間解放は、抑圧者も人間化し、被抑圧者のみならず抑圧者の解放でもある。


→対等な関係性にある場の可能性を信ずる。
→気づき、学びの主体は学習者にあることを常に意識し、健全な批判精神を培う。
→人間解放の視点で開発のあり方を考える。(開発教育)
→人びとの声が反映する学びを築く。
→対話を単なるコミュニケーションではなく世界認識のツールと捉える。
→学習者が変わると共にファシリテーターも変わる。


(5) イヴァン・イリイチ (1926-2002)

*『学校をなくせばどうなるか?』 より
・過剰な効率性を追求する現代社会の軸としての学校では真の学びを築けない。(脱学校)
・学校に行かずとも (teachを得ずとも) 学習 (learn) は可能。(フリースクール)
・真の学習は、学習者の自律性 (主体的学習) を保障する。


→学びの本質を、teach でなく learn として捉える。
→主体的な学びには、学習者に対する無条件の信頼が伴う。
→現状とその将来を課題提起し、未来 (希望としての未来) の選択肢を考察する。


*『生きる思想』 他より

→自らに、社会に対して、常に (多様な切り口で) 「問い」 を発し続ける。
→安心して語り合える場を大切にし、学習者の力と共有の意義を信じる。
→直接の対面としての対話を重視し、自分の意識で、言葉で語る。
→ 「わたし」 を 「われわれのなかのわたし」 と捉える視点。
→学びの目的やねらいが大切である。方法や手法はそのために用いるもの。

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