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2012年12月30日 (日)

経済成長vs脱原発の日独比較

 2012年も歳末。。今年は解散総選挙がらみで、原発、消費税、TPP、憲法改正など日本の課題が一気にしかも複合的に表面化した。どれもきわめて重要だが、私は原発問題こそが私たちのマインドセットの根っこに関わるものと考えている。

 今月のツイッターで何日間かつぶやいた内容をここに整理するが、今回の関心は 「経済成長と脱原発」 の対立に関するそもそも論である。これを考えるのに、現在の日本と1970年以降のドイツとの対比が役立った。幾つか古い文献にも当たったが、軸としたのは 『西ドイツの社会民主主義』(仲井斌) だった。

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 本日の総選挙のさまざまな争点の根底にあるものとして私が最も注目しているのはこの国の原発行政への (隠れた)「国民投票」 でもあること。(12/16)

 昨日の総選挙で原発判断は ”慎重” を国民は選択したことになる。しかし脱原発志向票は分散したが自民比例得票率27.6%の現実からしても、これからの日本は原発をめぐる模索が深まるものと考えている。(12/17)

 今回の得票傾向は、自民横ばい~民主激減~第三極分散が特徴。前回自民から離れた票が自民に戻ったわけではない。現実的な景気優先のなかで民意は別の可能性を求めている。分散は愚。今回芽ばえたのは脱原発志向で地方主権の社会発展を期す結集あるいは 「緑の連合」 の可能性。(12/18)

  大佛次郎論壇賞受賞の大島堅一 『原発のコスト』。まとめておくと、原発の 「見えないコスト」 が利害関係者でなく国民負担になっていること。利害関係者によって原発行政が進められていること。この実態が原発推進の構造になっていること。(12/19)

  大島堅一氏の警告:このままでは 「原発がなければ経済が崩壊する」 などといった新たな神話が次々と生まれ、過ちが再び繰り返されるのではなかろうか。(朝日朝刊) (12/19)

  昔ながらの経済政策が市場を喜ばせている。目先の危機管理 (公共投資+金融緩和) は株高・円安を生み出すが需給ギャップを克服できず息切れすることは世界の常識。「日本化」 に苦悩する西欧の後追いは何とも皮肉。求めるべきは抜本的変化だが逆を行っている。(12/20)

  「原発がなければ経済が崩壊する」 に関して日独比較をしばらく。現在の日本の状況は1970年代ドイツに似ているように思える。当時、与党 (キリスト教民主同盟) も野党 (社会民主党) も経済問題の解決は経済成長で解決するという当たり前の発想しかなかった。(12/21)

  1970年代ドイツは労使ともに 「原発がなければ経済が崩壊する」 考え方に囚われていた。それに対して、この時期に誕生し社民党に大きな影響を与えたのが 「脱原発」 を掲げた新生・緑の党だった。(12/22)

  1970年代ドイツのエコロジー派の代表はエアハルト・エプラー (社民党左派) とされる。彼は石油危機 (1973) 以来高度成長時代の終わりを認識し、「何が成長すべきで何が成長すべきでないか」 すなわち経済成長の質的な転換の必要性を提言した。(12/23)

  1970年代以降のドイツでは、経済成長が必要か否かを論ずるよりも、もっと現実的に 「いかなる経済成長が必要なのか」 を決定づける政治的選択が重視されてきた。重要なのは開発のあり方(方向性) に対する政治的合意である。(12/24)

  ドイツの社民党は、国家の経済的役割を量的成長政策ではなく市場が機能していない分野に働きかけて、持続可能なイノベーションの原動力となることとしている。これによって社会変革をリベラルに実現する国民政党となっている。(12/25)

  1980年代以降のドイツは、エネルギーの節約、代替エネルギー開発を推進しながら、原発は過渡期には必要としてきた。現在の日本の姿に近い。社民党で脱原発への政策転換がなされるようになるのは、市民運動の影響下での原発技術への懐疑と物質主義の価値観の転換だった。(12/26)

  ドイツは1980年代から30年以上の試行錯誤を経て、今日では、保守の政権党・キリスト教民主同盟 (首相メルケル) すら脱原発へ政策転換するに至っている。その転換の最終的プッシュ要因が日本の福島原発事故 (2011) の教訓だったことは言うまでもない。(12/27)

  ドイツでは脱炭素化を進めるべく2000年に 「再生可能エネルギー法」 を制定し、以来 ”グリーン・ゴールドラッシュ” と言われる再生可能エネルギーブームが生じた。この実例でも、残念ながら、日本の環境政策は一周遅れの感がある。肯定的に言えば 「これから」 である。(12/28)

  ドイツの 「経済成長と脱原発」 論議の歴史的経緯と対比して日本の今後を予想すると、長い試行錯誤と論議が必要なのだろう。この国民的討論には保守政党と対峙するリベラルな国民政党の存在が不可欠だ。さらに第三極のエコロジー政党がキャスティングボートを握る可能性があるだろう。(12/28)

  日本は 「成長分野育成と選別的公共投資」 が重要だが現在の方向性には不安が伴う。皮肉にも ”日本化” に苦悩する西欧後追いの危惧だ。しかしながら、そこからこそ大転換の芽が現れる可能性がある。私は日本こそが”強欲資本主義”の弊害を超え得る国だと信じている。(12/29)

  選挙をめぐるあれこれも一区切りの年末年始。原発、消費税、TPP、憲法改正などなど、日本の諸課題が一気にしかも複合的に表面化した2012年末だった。。(12/30)

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