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2012年9月27日 (木)

堀公俊氏の特別授業(ダイアログ)

 昨日の開発教育ファシリテーター講座(拓大)第16講はゲスト講師に堀公俊氏をお招きしての特別授業。テーマは 「ワークショップの可能性~ダイアログのファシリテーター」。副題にあるように、近年、講座の関心は 「対話(ダイアログ)」 に向かっている。授業は私もさまざまな学びを得たワークショップだった。

1 基礎講義

 講義は、話し合いの三つのモード (会話=カンバセーション、対話=ダイアログ、議論=ディスカッション) を区別するところから始まった。実際にやってみることで違いを確認。「最近どう?」 という井戸端会議的話題で近況を理解しあうことから、「それはどういうこと?」 といった探求へ、そして 「どんな悩み?」 の話題から意見を闘わせ、何らかの結論を導こうとする一連の流れが展開された。

 この作業での堀氏の含みは、これらはすべて話し合いのための重要な要素であること。つまり、何かを話し合うとき価値観が合わないままでは対立のまま終始してしまう。議論がまとまらないのは対話で思考の土台ができていないのであり、かつ、対話がうまくいくためには地ならしとして相互理解の関係性が大切であるということ。

 しかしながら、こうした話し合いのプロセスで欠けがちなのが 「対話(ダイアログ)」 である。ダイアログとは、結論や合意でなく探求や発見を目的とするもので、前提(思い込み) を疑い、だからこそ判断を保留しながら、語ること(主張) と考えること(探求) のバランスをとるもの。ここには何らか共有するものが現れ、新たな仮説を発見することになる。つまり、ダイアログは、これまでの既成概念を超えた 「新たな創造」 を生み出すプロセスと理解できる。

 こうしたダイアログが必要なのは、既成のストーリーでは通用しない時代になっているからである。いわば時代の要請。大きく変貌し続ける転換期とも言える時代に、いかに対応する力を私たち一人ひとりが身につけ、チームとして組織として活動していくかが問われているからにほかならない。

 ゆえに今日、ダイアログはさまざまな場で応用されている。教育の場、組織開発の場、社会的合意形成の場、等々である。総じて、関係性を築き(会話)、意味を共有し(対話)、行動を変革し(議論)、学習を深めていく(省察) 循環は、自律分散型の活性化した社会を生み出すことにつながるだろう。

 さて、対話を促進するにはどうするか、これが現実的課題である。

 これまでのまとめにもなるが、ダイアログの進め方として4つのステージ:傾聴(批判判断をせず、思いを理解する) ~ 探求(隠れた前提を疑い、新しい考え方を探す) ~ 発問(新たな仮説を呈示し、考え方の変化を促す) ~ 発見(新たな考えを共有しあいながら、新たな考えを探り続ける) を考えることができた。

 そして対話では、経験をもとに語ること、言葉にこだわること、違う考えも敢えて出すことが重要。さらに、対話を促進する要素として、特に、質問技法として、突っ込む ~ 煽る ~ 思い込みを打ち破る(リフレーミング) ことなどが挙げられた。

2 エクササイズ

 ダイアログを実際にやってみるために、3つのワークを体験した。

(1) ペアを組んで、例示されているテーマについて対話してみる。
<ふりかえり> 対話ができたというペアと会話・議論レベルにとどまったというペアにわかれたが、対話を妨げる要素としては (不合理な)信念がある。これは自分の考え(思い込み) へのこだわり。システム思考でいう 「メンタルモデル」 の固執に起因する。
 残念ながら、講師から見ていて、ダイアログがなされているようには見えないという厳しい指摘があった。その根拠は活発に話し合いがなされていること。これは、いわゆる 「ダウンローディング」(U理論) の意見交換に見えるという指摘であった。なるほど、対話なら、むしろ沈黙を含んだ時間が流れるはずである。

(2) ダイアログの例として、「なるほど、だったら、~ではないだろうか?」 というフレーズが呈示された。そして、ペアを変えてもう一度。
<ふりかえり> 新たな問い立ての難しさを実感。

(3) ダイアログの本質に迫る。「正」~「反」~「合」 の弁証的方法の実践。
問いの例は、「~って何?」 を定義づけるもので、題材は、ワークショップ、ダイアログ、ファシリテーション、開発教育、国際理解、開発する、支援する、学習する 等。
まず、教科書的な当たり前の考え方を出し、それに対峙する考え方を出し、それらを吟味する中でもっと大局的な考え方に至る(止揚)。
<ふりかえり> 4人グループで行ったが、人数が増えると難しくなること、対峙する考え方を単なる対立意見より深いところから出そうとしたが難しかったこと、考え方のベースが足りないと深まらないこと などを共有できた。

3 今後の課題

 「ふりかえりシート」 を読むと、ダイアログの場でのファシリテーターやFG(ファシリテーション・グラフィック) の必要性を実感したという感想が目立つ。これは、参加者一人ひとりがまだダイアログをマスターしていないことに起因するが、参加者がダイアログに慣れていないという前提はリアリティがあるだろう。
 つまり、ファシリテーターには、全体の場を生成し保持している本来のファシリテーターとともに、各グループ内のファシリテーターの存在があり得る。

 本日の授業では、本来のファシリテーター (いわゆる 「ジェネレイティブ・ファシリテーター」) を念頭におき、グループのダイアログが停滞する場合は、やむなく介入して問いかけて活性化することを基本としていた。グループ内のファシリテーターは場合によっては必要だが、往々にして場を仕切っていまう懸念がある。ゆえに、ワールド・カフェでは、ファシリテーターではなくホストにとどまると考えていた。

 しかし、グループ内で場を仕切ってしまわない、ダイアログの促進者 (ダイアログ・ファシリテーター) とはどのようなスキルを要する存在か?は着目すべき課題と言わねばならない。それを検討するためのヒントはすでに今回の授業内容に示されてもいた。

 私は、今回、ダイアログは書いて解説しようとすると本質からずれてしまう、言葉そのものが重要と痛感した。同時に、グループ内のファシリテーションのあり方を探求する必要性も痛感した。
 FGについても同様である。これまでのような議論を ”見える化” するFGとも、ワールド・カフェのような ”いたずら書き” としてのFGでもない、新たなFGを探求する可能性を強く実感したのだった。

 最後に、貴重な学びの場を提供していただいた堀公俊先生に感謝。

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コメント

小貫先生、昨日は非常に残念ながら欠席してしまいましたので、早速このようなブログを掲載していただき、ありがとうございます。どんな授業だったかある程度想像することはできますが、やはり経験、体感したかったです…来週の授業は出られるよう努めたいと思います。

INOUEさん、早速の反応をありがとうございます。
昨日の授業は「ダイアログ入門」の位置づけでしたが、深い内容を含んでいたと思います。その意味では、(仕事の都合で)参加できなかったことは私も残念に思います。
MLにも書きましたが、来週は昨日の授業を土台としつつ、昨日の復習も兼ねる開発教育のアクティビティを予定しており、少しでも役立つと良いなと思っています。

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