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2012年8月28日 (火)

『脱原発論』を読み解く(2)

 『脱原発論』 の要点整理を続ける。昨日の 「原発安全神話」 に続いて、本日は 「放射能安全神話」 について。

2 放射能安全神話

 まず、基礎知識として知っておくべきは、国際放射線防護委員会(ICRP) の安全基準である。2007年勧告によれば、1年間の被曝限度量は平常時1ミリシーベルト。例外は、緊急時20~100ミリシーベルト、緊急事故後の復旧時1~20ミリシーベルトとされている。(年間1ミリシーベルトは毎時に換算すると0.11マイクロシーベルト)

 こうしたデータの解説は第6章 「これが現実! 放射線量に正しく恐怖せよ」 に詳しい。コミックでは、第13章 「トンデモ説を妄信するカルト保守」 がわかりやすい。

 100ミリシーベルトの危険性とは、この量の被曝で 0.5% の癌発生率の増加が想定されることからきている。そして、例えば1ミリシーベルトなら比例的に 0.005% のリスクというように被曝の リスク0 はない。

 これが今日の国際基準だが、2種類の問題を抱えていることを知る必要がある。
 ひとつは、2007年勧告まで、100ミリシーベルト以下はリスク確認ができていないという見解を採っていたことから、100ミリシーベルト以下ならリスクなしとする 「閾値あり」 説や、低線量被曝はむしろ身体に良いという 「ホルミシス」 説が出回っていること。
 もうひとつは、ICRP は広島・長崎のデータから算出しているが、実はデータに誤りがあったことが判明して厳密にはもっと厳しい基準が必要とされているがそのままにされていることである。つまり、国際基準自体が揺らいでいる。

 本書の立場は、ICRPの安全基準を厳格に守る立場である。それどころか、ICRP勧告は甘いとまで考えている。徹底的な安全への対策が必要なのであり、だからこそ、このような悲惨な大事故の可能性のある原発はあってはならないものなのだ。

 当面の対策はどうあるべきか。これについては、第11章 「日本はベラルーシ以下なのか?」 を読もう。

 今回の被災地は、筆者の取材では、例えば福島県郡山市でも毎時0.9マイクロシーベルト(年間換算8.99ミリシーベルト) だった。本来、年間5.2ミリシーベルトを超える場所は 「放射線管理区域」 で立ち入り禁止であるから、人が住める数値ではない。ましてや、子供が無防備に外出するのは相当危ない。大規模で徹底的な除染と子供の健康調査が必要である。
 衆議院厚生労働委員会で被災地の危険性を訴えた児玉龍彦氏(東大)に対して、「福島にとどまって住まざるを得ない人々がいる以上、危険だ危険だとばかり言ってもしょうがないのではないか」 という質問が出されている。政治的判断との葛藤である。
 児玉氏はこう答えている。「危険なことがあったら、これは本当に危険だから、苦労があっても何でもやっていこうと国民に訴えるのが専門家です。今までの失敗は、専門家が専門家の矜持を捨てたことにあります」 と。

 この発言は、「不安を煽るな」 と言いながら 「安全デマ」 を流すことの危険性に通じる。このことは、第9章 「日本は旧ソ連以下でいいのか?」 にあるように、文部科学省の福島県内の学校等についての通達に端的に現れている。
 この通達は、毎時3.8マイクロシーベルトまで認めるもので、屋内の放射線量を屋外の40%と仮定した数値で実質20ミリシーベルト/年に相当するとした。子供たちへの安全基準を可能な限り緩める方向で運用しようとした。

 さらに、原発推進派の考え方には、「閾値あり」説 や「ホルミシス」説 による 「放射能安全神話」 がある。つまり、放射線被曝は低線量なら問題はない、あるいはむしろ健康に良いとする。

 こうして、日本は法律で定めている一般人の放射線許容量、年間1ミリシーベルトを政治的に崩壊させ、年間20ミリシーベルトまで子供が浴びてもいいということにしてしまっている。(第15章「週刊ポストの安全デマを見抜け!」)

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