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2012年8月29日 (水)

『脱原発論』を読み解く(3)

 『脱原発論』(小林よしのり) の要点整理その3。「原発安全神話」 「放射能安全神話」 に続いて 「核廃棄物リサイクル神話」 について。

3 核廃棄物リサイクル神話

 これについては、第3章 「既得権者に説得力なし」 に描かれている。そして、新たな描き下ろしの第21章 「廃炉、核廃棄物、10万年の負の遺産」 が詳細に補足している。

 エネルギー安全保障の観点からも、原子力を自前の 「準国産エネルギー」 として確保するプランが日本のエネルギー政策の理想とされてきた。

 けれども、この 「核燃料サイクル」 計画は完全に破綻している。

 1980年代前半には高速増殖炉が実用化されるはずだった。だが、計画改定のたびに先送りされ続けている。
 高速増殖炉 「もんじゅ」 は事故を繰り返し、1兆円もの国費を投じながら未だ完成の見通しは立っていない。

 使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す青森県六ケ所村の再処理工場もトラブル続きで、1997年に予定されていた本格操業は延期され続け、建設費用は約2兆2000億円に膨れ上がっている。

 こうして、完成するかどうかもわからない夢のまた夢の 「核燃料サイクル」 にまどろんでいるのが日本の現実の姿である。この危険極まりない夢は、人間の生命を賭けるに値しない。

 「目を覚ませ!」 と叫ぶ本書が説く日本のエネルギーのあり方は次の通りである。
→真面目に 「エネルギー安全保障」 を考えるのなら、確実に化石燃料を調達できるように外交分野に全力を挙げ、シーレーン防衛を確固たるものとする一方、同時に尖閣の油田や近海のメタンハイドレートといった日本国内に潤沢にあるといわれる資源を開発し、さらに自然エネルギーの割合をできる限り増やせるよう技術を進めることだ。(p63)

 さて、大問題として、原発にはいずれ避けて通れない難題がある。老朽化した原発の廃炉問題である。これまで、まだまともな廃炉解体の実績はない。

 当然ながら、廃炉はすぐに解体できない。運転停止して、数年から10数年置いて半減期を待ち、放射線レベルがある程度下がってから解体工事を始める。しかし、決して容易でなく、大抵の場合、工期も費用も予想をはるかに超過する。

 正常に停止した原発でさえ廃炉の処理は大変なのだが、今回のように、メルトダウンを起こしてしまった原発を廃炉にする困難はいうまでもない。
 チェルノブイリ原発の場合は、飛散した燃料を取り出すことができず 「石棺」 にしたが、いつまた津波が来るかもしれない福島第一発電所ではそれも不可能とみられている。

 さらに、何より深刻な問題は、使用済み核燃料、高レベル放射性廃棄物の問題である。所詮、原発に完全な 「リサイクル」 はありえない。

 現状では、再処理できない使用済み核燃料が燃料棒のままで各原発の使用済み核燃料貯蔵プールに貯まっていく。
 海外に依頼して再処理したとしても、返還されたガラス固化体が発する放射線はとてつもない線量であり、この放射線レベルがウラン鉱石並みのレベルにまで下がるまでに要する時間は10万年といわれる。これがどんどん増え続ける。
 重大な懸念は、これらを埋められる10万年動かない地層など日本にはない!ということだ。

 内閣府原子力委員会では、原発を維持して再処理を積み上げるよりも、原発をゼロにして全て 「直接処分(再処理せず燃料棒のまま容器に詰めて地下に埋める)」 する方がベターという結論となっている。

 即時に脱原発したとしてもこうした難題は避けられない。かといって、難題の先送りでよいのか。

 人類は取り返しのつかないことをやってしまったかもしれない。特に日本人は、この国土で決してやってはいけないことに手を出してしまったというしかない。

 これ以上、地獄が来るのを先送りし、子孫に押し付けるようなことはもう許されない。これは全人類の歴史に対する責任である。(p323)

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