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2012年7月26日 (木)

第14講 持続可能な社会の形成に向けて

 前期科目 「持続可能な社会と平和」 の最終講は、前講の 「連帯経済」 と共に授業の落とし所としている 「新しい市民社会(新しい公共)」 について考え、さらに、全14講のまとめを行った。

  「新しい市民社会」 は、近代資本主義の歪みとグローバリゼーション下の諸問題に対して、主権意識をもった市民のコミットメント(参画)することによって現れてきている。すなわち、大衆としての中間層が 「主権意識」 にめざめ、貪欲とマネーに踊らされる現実から、主体性をもって責任を分かち合う市民として台頭してきている。
 つまり、声をあげる市民たちの台頭である。ネットを通じて得られる幅広い情報が市民の判断と意思決定を支えている。
 「新しい公共」 は、それを具体化する一概念だが、市民が真の「第3セクター」として、行政(第1セクター)と対等に協働できる社会構造に転換することが問われている。

 さて、授業は、最終講義として、全14講のまとめにかなり時間を割いた。
 そもそも、この授業の設置理由は 「平和を構築する持続可能な社会を考察することにより、従来の成長至上主義のもつ問題点を明らかにする」 ことだが、最後のまとめとしては、「だからどうするの?」 の部分を再整理しておきたい。
 授業では、人間の 「本当の幸せ」 について考察しながら、オルタナティブな 「連帯経済」 や 「新しい公共」 の動向を紹介してきたが、その基本的な考え方は何だろうか?

 ・・・ 結局、授業で提示したのは、「動的循環型社会」 モデルだった。経済成長至上主義でなく、かといって後退する経済でもない、有限な経済成長を超えて少子高齢化の成熟社会に対応するらせん状の社会進歩である。
 重要なのは経済規模の問題ではない。経済は循環しながら ”らせん状” に進化していくであろう。そこで問われるのは、社会の質的充実であり、心の豊かさである。
(参考) 幸せ経済社会研究所 「GNH(国民総幸福) みんなでつくる幸せ社会」

 捕捉になるが、現在ネットで拡散されている演説に、リオ+20でのウルグアイ・ムヒカ大統領のスピーチがある。
 この気高いスピーチの一部を引用し、解説してみよう。

ムヒカ 「質問をさせてください : ドイツ人が一世帯で持つ車と同じ数をインド人が持てば、この惑星はどうなるのでしょうか?」
・・・ 経済成長の持続不可能性とは、つまりはこういうことだ。先進国の富裕社会と同じ消費を世界中が平等に満喫できるほど地球に許容量はないが、現実は、無限な経済成長を前提に、経済成長をどうするかの次元で対立している。

ムヒカ 「私たちはグローバリゼーションをコントロールしていますか? グローバリゼーションが私たちをコントロールしているのではないでしょうか?」
・・・ 「市場の失敗」どころか、「世界市場の失敗」の側面はコントロールできなければならないが、現実は逆に支配されてしまっている。

ムヒカ 「貧乏な人とは、少ししかものを持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ。」
・・・ 「足るを知る」人は満たされており、「足るを知らない」人は満たされることなし。

ムヒカ 「根本的な問題は私たちが実行した社会モデルなのです。」
・・・ 私たちは、経済発展のために生まれてきたのはでない。経済発展は人類の幸せを目指さなければならないが、現実は、人間にとって大切なものを見失わせている。

 これらの内容は授業の基本的なテーマそのものと感じる。
 間違いなく、ムヒカ氏の語ったことは、持続可能な社会形成のための基本的な考え方を問いかけているであろう。問題の根源は、環境問題というよりも、私たちの社会のあり方そのものである。
http://hana.bi/2012/07/mujica-speech-nihongo/

(参考) 配布したレジュメの概要は以下の通り。
1 新しい市民社会
(1)背景1:近代資本主義の正統性の揺らぎ
(2)背景2:グローバリゼーション下の光と影
(3)形成:主権意識とコミットメント
2 「新しい公共」
(1)「覇権空間」から「公共空間」へ
(2)日本の社会構造と協働のデザイン
(3)社会的企業とNPOの事例
3 共生社会
(1)女性のエンパワーメント
(2)多文化共生
(3)地域コミュニティが変化の主体となる内発的発展
4 持続可能な社会の形成 
→ 動的循環型社会(少子高齢化の成熟社会のあり方)

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