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2012年7月13日 (金)

第13講 連帯経済をめぐって

 前期科目 「持続可能な社会と平和」 の授業がもうすぐ終了する。「持続可能性とは」 「平和とは」 という問いから始めて、「連帯経済」 と 「新しい公共」 が機能する市民社会を持続可能な社会形成の落とし所としている。そこで、科目全体のヤマである先日の授業 (「連帯経済をめぐって」) を振り返っておこう。

 授業は、西川潤著 『グローバル化を超えて』 をテキストとしている。この書は昨年6月刊行だが、当時の私の授業内容とそっくりなのに驚き、必読書として指定させていただいた。(西川先生とは長らく賀状を交わすのみになっているが、私が尊敬する学者のひとりであることは言うまでもない)

 授業では、連帯経済を次のような範疇でイメージ化して展開した。
・ 非営利セクター(生活協同組合、ワーカーズコレクティブ、等)
・ 非営利金融(NPOバンク、信用金庫、マイクロクレジット、等)
・ その他、フェアロレード、地域通貨、市民メディア、等

 つまり、連帯経済とは、「一方では、グローバリゼーション下に経済活動から排除されていく人びとに対し、公共政策の手をさしのべ、これらの人びとを経済に包み込む (包摂、inclusion) 行動を指す。公共部門が雇用をつくり出しにくいときには、公民提携やあるいはNPO部門で雇用をつくり出す。他方では、これら市民部門の社会的企業やNPO金融、フェアトレード、コミュニティ企業、協同組合らがお互いに協力し合って、非営利の社会的ビジネスの発展に努める」(p.10) ものである。

 授業のレジュメは次のようにまとめている。
できるだけ具体化し、その理念を示すことを意識した。
1 連帯経済の起源と歴史
(1) 市場経済の歪みに対応する政府の社会保障と「社会的経済」
(2) グローバリゼーション下の経済問題の拡大と国際ガバナンスの対応不足
(3) 今日の連帯経済の諸要素
2 社会正義と連帯を求める「市民のグローバル運動」
(1) 世界社会フォーラム
(2) アジアの連帯経済フォーラム
(3) 連帯経済のさまざまな分野
3 連帯経済としてのビジネスの社会化
(1) 企業の新しい展開
(2) 新しい企業の胎動
(3) 事例:社会起業家たちの台頭
4 ローカリゼーションの思想
(1) グローバリゼーションに流されない「幸せの経済学」
(2) 新しい持続可能な地域づくりと世界をつなぐネットワーク

 270名登録のマス授業なので、グループ討議の時間を組みにくい。その代り、学生のリアクションとのやりとりを大切にしている。

 今回の授業のヤマは、具体的事例とその理念を紹介する 3-(3) だ。
特に、朝日新聞土曜版で取材された 「カタリバ」 今村久美代表の記事を紹介した。それは 「大学なんてつまらない」 という故郷の友人たちの声に驚き、それはなぜだろうという問いから学生時代に 「カタリバ」 を創設した逸話である。

 さて、以上を概観したうえで、多岐にわたるリアクションペーパーとそれへのコメントで、参加者の反応に基づく振り返りをしておきたい。

カタリバへの感想
① 「私自身を含め、私の周りでも大学がつまらないという意見を聞くんですが、こんな企業をつくろうという発想はない。それを大学生のときに立ち上げるなんてすごいなと刺激を受けました」
→ こうした実相は毎時間のスタートラインである。

→ 「自分の夢を追及しているときの出会いこそ大切にすべし」 と語った何気ない一言に、次のような反応が数多く出ている。
② 「カタリバを紹介してくれて、先生、ほんとうにありがとうございます。考えていたことがあるのですがふっきれました。仲間は必ず現れる・・・本当に心を打たれました」
③ 「私はアイセックというNPO法人の学生団体に所属していますが、ここで出会った仲間はかけがいのない人たちばかりです。今やりたいことを精一杯やっていきたいと思っています」

新しい人間観と倫理
④ 「新しい人間観=利己+利他であると思います。これは幸福を手に入れるということを考える際にも同じことが言えるのではないでしょうか」
→ これは、M.ユヌスの提起する人間観に対する反応だが、連帯経済の 「利潤優先でない倫理」 への反応でもあるだろう。
⑤ 「自分の考えとしては、人間は利己のみのために動くと考えている。利他とあるが、それは結局最終的には自分の利益になるから行動するのではないか」
→ こうしたリアクションも貴重。”情けは人の為ならず” の真意を再考したい。(アダム・スミスの市場原理も実はこの真意に基づいている)
⑥ 「社会貢献とは何なのでしょうか?最近、それに疑問を感じるようになりました。社会貢献なんて言葉はうっとうしいものかもしれません」
→ 営利と非営利の違い、社会貢献と偽善の違いなどが頭をよぎる。深めたい意見だ。

協同組合、信用金庫、その他
⑦ 「”らでぃっしゅぼ~や”は確か創業者が松下政経塾出身であったと思います。松下幸之助の ”利益は社会貢献の証” という理念と照らし合わせてみると、理にかなうような気がします。私は生協の政治的な活動にはやや懐疑的なのですが、多少高くとも良いものを求める傾向に沿って選択肢が増えること自体は好ましいことであり、生協などの仕組みによって、都市部から離れた山間部とも経済的なやりとりが生まれ、地域の活性化にも一石を投じることになるのではないかと思います」
→ こうしたリアクションは教室全体で共有したい。次のような意見も同様に。
⑧ 「先生もおっしゃっていたが、城南信用金庫が全店舗で東京電力との契約を解除したのには大変驚いた。信用金庫として連帯経済の要になるだけでなく、企業として ”原発に頼らない安心できる社会” をめざして持続可能な社会に貢献していくことは素晴らしい」
⑨ 「日本もイギリスに見倣うべきでしょう。ブラウン元首相の主導のもと、イギリスの社会的企業は急速に開花しました」

ネットワークの力
⑩ 「今日の講義の中でキーワードは ”ネットワーク” ということではないかと感じました。インターネットの普及を利用し、自ら発信することで世界中に仲間ができ、新たなネットワークができることや、私たちが日常できることに取り組み、グローバルなネットワークで市民社会を形成するということは今日の情報化社会の大きな利点であることを知ることができました」
⑪ 「週末にツイッターやフェイスブック等で原発に対するデモの集まりがあるが、まさにここにこそ民衆がネットワークでつながっている証ではないかなと思う」
→ 確かに、”ネットワークの力” はカギとなるキーワード。

最後に、
⑫ 「政府+民間企業+市民セクターの協働という部分に興味が湧きました。これまで、公+民の第3セクターという形で公共財を供給しようという取り組みがありますが、赤字で苦しむ3セクも多いと聞きます。市民が自ら意見を直接反映させ、かつ利潤最優先ではない公共のあり方はどのようなものなのかを考えようと思いました」
→ これは、次回、「市民社会の新しい公共」につながっている。
 

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