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2012年2月26日 (日)

開発教育研究フォーラム(手法体験とダイアログ)

 第6回開発教育研究フォーラム(2/25)終了。テーマは 「~私が輝く、チームが輝く~これからのファシリって?!」。開発教育ファシリテーター講座修了生を中心に40名強が参集した。活気あるフォーラムだったと思う。

 今回のテーマ 「これからのファシリって?!」 をかみ砕けば、新しい手法を経験するなかで、それらの本質は何か? ファシリテーターが力をつけることにどう役立つか? を体得しようとしている。それがファシリテーター講座の方向性であり、そこから共に学び続ける意思を共有しようとしている。

  開発教育との関わりで意義づければ、今回の手法は開発教育のあり方に関わる。つまり、ここでの手法は開発問題への対策(未来志向アプローチ) として、現場に密着して内容にも関連する。これは、ネパールのファシリテーター、カマル・フィヤル氏の 「あなたの夢は何ですか?」 から始める参加型開発のあり方とも重なる。

 ここでは、午前の部(11:00-12:30)の 「AI(アプリエイティブ・インクワイアリー)」 と、午後の部(13:30-15:30)の 「ワールド・カフェ」 の手法体験、およびそれに続く全体会の模様をまとめよう。

 日帰りのワークショップで2つの手法を盛り込むことには実は無理がある。敢えて挑戦したのだが不平は聞かれなかった。むしろ、「午前からは長いという印象でしたが、実際やってみたらあっという間に時間がすぎました」 や 「AIについても知ることができ充実したセミナーでした」 という感想が聞かれ、試みて良かったと思わせる。

1 AI について

 Appreciative Inquiry (真価を正当に評価するための探求) は、個人や組織が本来もっている価値や未来の可能性を考察し、その実現のための課題を探求していく手法。

 こうした手法の ”命” は問いである。今回は次のような3問であった。問1は、チームで仕事をしてきて、最も達成感や充実感を感じたことについて。問2は、その素晴らしい体験を可能にした原因について、問3は、あなたの良い点について。

 初めて体験した方も多く、「自分自身への新たな発見があり、自分をポジティブに考える・とらえる視点をもらうことができた」 や 「ポジティブに強み?を探していく方法に興味をもった」 といった反応が多かった。

 まさにここでとらえたいのは、ネガティブなアプローチではなくポジティブなアプローチの可能性である。そして、これまでの問題解決アプローチでは真の問題解決に至らないと考えるパラダイム転換である。そのことを体験したのだった。

 ふりかえりで出てきた私たちの潜在能力や可能性のキーワードは、”信念” ”行動力” ”つなぐ力” ”寛容さ” などであった。

2 ワールド・カフェについて

 ワールド・カフェはすでにかなり普及している。「問い」 に対して対話のネットワークを意図的に作りだす手法。

 ここでも重要なのは、コンテキスト(目的、参加者など) と 「問い」 である。今回の目的 (テーマと意義) はすでに触れた。問いは次の4問であった。問1は、開発教育ファシリテーター講座を受講して良かったこと、問2は、今、開発教育やファシリテーターとして感じている壁について、問3は、その壁を越えた未来が実現したら可能になること、問4は、これから、開発教育やファシリテーターとして、どのような一歩を踏みだすか?

 ワールド・カフェで重要なのは、対等な立場であること、オープンに話し、オープンに聞くことである。つまり、対等な協働性や、独りよがりでない仮説の語り合い、聞きたいことだけでなくすべてを傾聴する姿勢などが語り合い(ダイアログ) の土台となる。

 第4の問い 「これから私たちは、開発教育やファシリテーターとして、どう向き合い、どのような一歩を踏み出していきますか? どのようなコミュニケーションやコラボレーションが望ましいと考えますか?」 に対する反応としては、次のような事柄が提起された。

 ファシリテーションを積極的に活用し、交流すること。価値の共有を大切にし、まず身近なところから取り組むこと。チームとして行動・実践していくこと。コミュニケーションを大切にしてやり続けること、など。

3 全体会

 午前、午後の手法体験を全体としてふりかえった。ファシリテーターは、壁に貼ったグループワークの模造紙をみながら、どんな学びがあったかを整理していった。

 AI では、先にあげた潜在能力や可能性を確認した。これらは、ファシリテーターにとって不可欠の資質でもあるだろう。

 ワールド・カフェでは、第2の問い 「あなたは今、開発教育やファシリテーターとして壁を感じていることはありますか?」 における ”壁” が全体的に大きなネックになっていた。つまり、状況はファシリが活かせる環境ではないこと、何もきめられない社会になっているという認識である。したがって、可能性に向けて踏み出す一歩が明確とはならなかったのが悔やまれた。

 けれども、これこそが重要な現状認識なのであり、それに対して、私たちはどう向き合うかが問われている。

 特に印象深い感想は、「問4で考えたことが AI の発表と重なりました。”行動力” なのです」 というもの。このことの共有は今回のねらいに最も整合していると思われる。 

 全体会については 「最後のまとめのファシリが上手く意見を聞き、説明を加えてくれたので良かった」 という反応が代表的である。ファシリテーターはこの難しい課題によく対応していたと考えたい。

4 補 足

 筆者にも最後に少しだけ出番が用意された。私が10分間で伝えたかったことは、私たちは、ファシリテーターとして社会の諸問題に対応するのに、このフォーラムでの学びをどう活かすのかに対するふたつの発想であった。

1) 状況は複雑であり、特に利害関係の深刻さゆえにうまくいかない現実は、身の回りにも、国家レベルでも国際開発現場でも確かにある。私たちは、本日、困難な問題を 「ダイアログ」 で解決するという手法を学んだことを意識したい。ダイアログとは、話し合いを深めることで、”あるべき姿” の共通の価値を見いだす 「共創」 の会話である。

 紹介したのは南アフリカの混乱を、ダイアログによって、力の支配でなく解決したとされる国際ファシリテーター、アダム・カヘンの 『手ごわい問題は、対話で解決する』 であった。

2) これからのファシリテーターにとって重要なのは、これまでのネガティブな問題解決ではなく、ポジティブな課題発見ではないか? 本日のホールシステム・アプローチはこのための手法であり、問いの立て方もこれまでと真逆であることに注目したい。ポジティブ思考と未来志向が有効に機能していることを活かしたい。

 紹介したのは、アドバンストコースの講師でもある香取一昭氏の 『ホールシステム・アプローチ』 であった。

 以下、ここで 3点補足したい。

 まず何より、「ファシリが活かされる環境がない」 という現状認識への対応について。

 それを越えにくい ”壁” とするのでなく、そもそも、ホールシステム・アプローチのファシリテーターにとっては 「場のデザイン」 が ”命” なのである。つまり、ワークショップの場づくりを超えた、ワークショップそのものの場を創りだすことを前向きに考えるのである。

 これは、感想にあった 「行動力の重視」 に通じるだろう。

 次に、このフォーラムはこれで終わりではない。まだまだ共有したいことがあり 「道半ば」 と言っても過言ではない。フォーラムで学んだように、私たちは未来の ”ありたい姿” に焦点を当て、そのためにどうするかの課題を発見していくことが重要である。これをそのまま、今後の私たちの行動指針とすることをここに宣言しよう。

  開発教育ファシリテーターとしてどう生きるか? その ”ありたい姿” は今回共有した2冊の書籍を読み込むことが土台となる (これらは実は、研究会の 「システム思考」 や 「学習する組織」 論などを具体化するものでもある)。アダム・カヘンら世界のファシリテーターたちはモデルになるが、私たちはまず足元からどう活動するかが重要ではないだろうか。

 修了生の皆さん、これからのスタートを共に歩んでいきましょう!

 最後に、実は気にかけていたワールド・カフェの問4への反応について。問4の本旨は 「未来の可能性を実現するためにはどうしたらよいか?」 である。しかし、表現をやや複雑にしたために、「問いかけの文章に不明な部分があった。(例えば問4は多数の問いが含まれています)」 という指摘を受けた。その通りと思う。こうした学びも共有する意味ありと考える。

 ともあれ、(実行委員会である) ”チーム・フォーラム” は、合宿までして準備し、力を尽くしていた。自主的活動の中でみんな一人ひとりが輝いていた。アドバンストの学びが単なる座学でなく実践になったのだった。”チーム・フォーラム” の皆さんに、ここに心より感謝の意を表したい。  

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