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2012年2月22日 (水)

ホールシステム・アプローチ(その3)

 開発教育ファシリテーター講座(アドバンストコース)は香取一昭氏の3回連続講座の最終回であった。これまで、ワールド・カフェ ~ AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー) を体験的に学んできたが、締めくくりは 「フューチャーサーチ&OST(オープン・スペース・テクノロジー)」 である。

 今回、体験的に学ぶといっても、本来、前者は2泊3日、後者は半日~2日半を要する。自ずとほんの一端を体験するのみになる。ただし、今回は、手法の解説をきわめて興味深く聞けた。

 すなわち、前者は、アダム・カヘンの 「シナリオプランニング」 の手法と類似している面がある。その観点で、比較しながら理解することが有効と思えた。フューチャーサーチ もシナリオを描くのである。

 後者は、ワールド・カフェ のあとに実施する活用法が定型化されている。その観点で聞くことで理解を深めることができたように思う。ワールド・カフェ が未来の可能性を思い描くまでなのに対して、OST はプロジェクト提案にまで至るのである。

1 フューチャーサーチとは?

 フューチャーサーチは、過去~現在~未来~コモングラウンド~行動計画という5段階で構成される。

 特定の課題に関係する幅広い利害関係者(ステークホルダー)を招く (8種の多様な利害関係者が8人ずつ招待される64名のワークショップがモデル)。そして、過去、現在について様々な角度から検討することで、将来の理想的な未来のシナリオ(ビジョン)を描く。このあたりはシナリオプランニングに類似していると思われる。

 アダム・カヘンの南アフリカの事例では、複雑な現状の延長として起こりうる未来環境について4つのストーリーを作成した。それによって、利害関係者に未来環境への共通の価値(コモングラウンド)の選択を促した。力の支配ではない、共通の価値による合意(意思決定)が問題解決の真髄であった。

 フューチャーサーチも、過去、現在に続く未来の段階で、理想的未来のシナリオを作成する。それはイメージとして共有しようとするゆえに寸劇や物語などの表現が重視される。ここでコモングラウンドを感じとるのだが、シナリオプランニングのプロセスを見事に凝縮していると感じた。

2 フューチャーサーチを体験する

 体験したのは第1段階の 「過去」 である。ここではテーブルごとに年表を描いて、過去をふりかえる。タイムラインは開発教育の参加型手法としても定着している。けれども、ここでのタイムラインは私の知るものとはかなり違う。時系列全体ではきわめて精緻だ。

 具体的には、過去の出来事だけに使い、個人、ローカル(日本)、グローバル(世界)に分類してふりかえる。時系列の全体としては、(今回はできなかったが) 現在についてマインドマップで影響している要因を分析し、未来についての理想シナリオにつなぐというもの。

 今回のテーマは、「日本におけるコミュニケーションの未来」 であったが、まずは、過去20年の重要な過去の出来事を書きだしていった。

 ワークから見えてきたものを列挙すると、世界の視点では、戦争が情報戦争になってきていること、環境意識の高まりや企業のCSRの動きが顕著になってきたこと、情報化社会とデジタルデバイドなど。日本の視点では、コミュニケーションのデジタル化、貧困化(格差社会)、ファシリテーションの重要性など。個人の視点では、海外とのつながりの拡大、コミュニケーションツールの変化、リアルからバーチャルへなど。

 ここでは、グローバル化の光と影が浮き彫りになったこと、参加者の関心事が読み取れること、この手法はAIなどでも活用できることなどを確認した。

3 OST(Open Space Technology) とは?

 OSTは、重要な課題について、関係者を一堂に集めて、参加者が議論したい課題を提案しながら、自主的に討議を進める。

 話し合いの結果を踏まえて、取り組みたいプロジェクトを提案し、参加者全員で優先順位づけを行う。そして、参加したい人が自主的に集まって実行チームを編成する。

 こうして見ると、2時間のワールド・カフェ+半日のOSTで、全体的な探求ダイアログと未来の可能性を思い描く手法から、実現に向けて検討して主体的な行動につなぐ手法のセットがイメージできた。

 OSTは、明確な大きな問い(テーマと目的) の下で、自主的な活動が保障されている。ファシリテーターは、コントロールを手放すものの、人々の集まりの自主組織化を絶対的に信頼して自主性を引き出す。かつ、議論の構造とプロセスを把握している。

 OSTは移動が自由であり、次の4つの原則を参加者が共有している。①ここにやってきた人は誰でも適任者である、②何が起ころうと、それが起こるべき唯一のことである、③それがいつ始まろうと、始まったときが適切な時である、④いつ終わろうと、終わった時が終わった時である。

4 ま と め

 シナリオプランニングを凝縮したフューチャーサーチ、ワールド・カフェの行動編にも位置づけられるOST、ふたつとも興味深い手法であった。

 全体ふりかえりでは、こうした手法がどんな対象にも適用可能だろうかという質問が出たが、これが場づくり(場のデザイン)の課題であろう。問題意識をどう持つかは、教育では 「内発的動機」 の問題でもある。

  また、ファシリテーションに関して話が膨らんだ。今回、フューチャーサーチでは、ワイズボード&ジャノフの "Don't Just Something Stand There" という考え方を、OSTでは、時間とスペースを創る(open spce)、保持する(hold space) 役割を紹介していただいた。

 これについて、私たちのファシリ講座では、ワークショップの場をデザインし、グループワークではポイントを把握するのみのファシリテーターと、グループ内で話し合いを促進するファシリテーターの2種類を想定している。

 したがって、前者はほとんど同一だが、後者は、ダイアログのファシリテーターの役割があるのではないか? Pセンゲのディスカッションにならないようにダイアログを促進するファシリテーターが必要という説とも重なる。(『学習する組織』2011)

 私は、更にファシリテーターの役割があると考えている。これは、diagolue facilitator を求める私たちファシリ講座の今後の課題である。

 いずれにせよ、ホールシステム・アプローチは、システム全体で合意を創造する手法としてきわめて魅力的である。私たちの追求する 「ダイアログによる課題解決学習」 とともに、開発教育での展開に密接につながっている。

 私たちの講座を理解し、支えて頂いた香取先生には心より感謝します。

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