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2012年2月 7日 (火)

第8回研究会(組織論と学習論)

 第8回 「開発教育システム思考研究会」 は富山県立大学九里氏の 「経営組織論」 と、拓殖大学石川氏の 「教育実践論」 の視点を併せて共有した。ビジネスの 「学習する組織」 の応用を志向する研究会としては、前提となる 「組織論」 を共有し、教育実践を検討したことは意義深い機会となった。

1 研究会のテーマの整理と今回の位置づけ

 最初に、前回の共有を行った。研究会の柱としてきたテーマは次の4つである。

(1)開発教育とシステム思考

(2)新しい教材開発の可能性

(3)「学習する組織」とダイアログ

(4)「学習する組織」と開発教育

 「学習する組織」 のテーマには、システム思考における構造的認識の学びの可能性を検討するなかで、「学習論」 の観点から到達した。したがって、「学習論」 あるいは教育実践論の視点で 「学習する組織」 研究を進めてきた。

 今回は(3)と(4)を深めるものである。「学習する組織」 が経営学理論の一環である以上、その 「組織論」 研究を深めて教育実践につなぐことは不可避である。今回は、それに関して、環境経営論を専門とする見地から探求し、さらに、教育論を専門とする見地から具体的実践を模索した。

2 経営組織論的な研究の概要

 まずは、過去100年に遡って、主要な経営学における組織論を研究対象とした。伝統的組織論から始めて、近代組織論を経て新しい組織論にいたる大きな流れの確認である。

 ここでは、組織論を整理しつつ、その理論の基礎となる人間観にスポットを当てた。経済人仮説やマシーンモデルの検討などである。

 経営組織論は、社会人仮説による人間関係論や、バーナードやサイモンらの近代組織論をもって、理論的にほぼ完成している。バーナード理論のキーワードとしては、自由意思、協働、伝達、権威、意思決定過程、動的均衡、サイモン理論のキーワードとしては、意思決定、組織均衡、影響力などが重要である。

 その後、環境に適応するコンティンジェンシー理論や、さらに新しい組織論を整理したが、私たちは、以上を踏まえて、組織の定義を 「協働のために、意図的に調整された、複数の人間からなる、行為のシステム」 とした。

3 マクロ理論とミクロ理論

 「組織論」 はマクロとミクロの2面で整理できる。合成の誤謬を考慮しつつも、研究会本来の「学習論」につなぐ意味でも、この観点での整理は重要である。

 ミクロ理論では、リーダーシップ論、モチベーション論、意思決定論を抽出した。

 特に、リーダーシップ論では、目的達成機能(P)と集団維持機能(M)から、生産性を求めつつ、集団の維持にも気を配るPM型リーダー像や、支配からリードするリーダーへの転換などを、モチベーション論では、さまざまな外発的動機と内発的動機などを検討した。

 「学習する組織」は「組織論」としてはまだ定着していないが、これらの観点から5つのディシプリンにどうつなぐかが課題であるように思われる。

4 事例研究

 「学習する組織」の事例は (株)ヒューマンバリューのHPを参考にして検討した。

(1) フィリップ・モリスUSA : 「学習する組織」 のコンセプトを戦略会議に活用する事例。

 戦略会議で、最初に各部門の専門家の環境分析を全体として俯瞰し、そこから、「最も重要なクエスチョンは何か?」を解き明かしていき、グラフィカルに記録してシェアするという。

(2) NASA : メンタルモデルを変革するためにシステム思考を活用する事例。

 これは、メンタルモデルを明らかにしながら、全体像をみせることで、システムの構造を認識し、「どうしたらこのシステムを変えることができるか?」を建設的に話し合えるようになったという。

(3) OST(Open Space Technology) の活用事例。

 これは、従来型の問題解決型のファシリテーション手法ではなく、「相互作用を促す場をデザインし、新たな方向性を生成する」 ファシリテーションの実践である。これは、今日の変化への対応として、自律的な取り組みを期待し、新たなコンテキスト(文脈)の形成を期待するものである。

5 「学習する組織」 論の教育分野における展開の可能性

 機械論的パラダイムからシステム論的パラダイムが語られるに伴って、「学習する組織」が語られるようになっている。この 「生きたシステム」 の学びは、主体的で多様な学習スタイルが問われている。それは、たったひとつの解を暗記する学びとは異なるものである。

 つまり、学校運営や教員のスキルアップに焦点を当てた「学習する組織」論ではない 「学び合いの場」 としての 「学習する組織」 論の展開である。この教育を、大学ゼミや社会人講座などの実践事例を検証しながら、模索していく。

6 研究協議

 以下、主要な結論を列挙する。

 「学習する組織」 論を教育分野に応用していくことは、今日の時代ではますます必要であることを確認した。

 その際、「学習する組織」 の原点である経営組織論およびそのミクロ理論を土台とすることの重要性も確認した。

 「学習する組織」 論を、教育における 「学習論」 に一般化することには困難が伴うが、特に、開発教育においては、きわめて親和性が高いことを確認した。

 研究会が一貫して重視してきたファシリテーションが、「学習する組織」 や ホールシステム・アプローチ で一層重要さを増す可能性を確認した。   

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