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2012年1月 4日 (水)

新しい民主主義へ

 本日の朝日9面オピニオン欄は欧州いや世界を代表する思想家アントニオ・ネグリへのインタビュー。年頭を飾るにふさわしい素晴らしい企画だと思う。ここに、あらましを紹介するとともに、考察すべきと思う事柄をまとめよう。

1 ネグリへのインタビュー・ポイント整理

 アントニオ・ネグリは 『<帝国>』(2000) の刊行でグローバル化した世界の権力構造を描きだした。この <帝国> に対抗する 「新しい民主主義」 の主体を描いたのが 『マルチチュード』(2004) だった。「マルチチュード」 は 「多様な個の群れ」 と訳すことができる。

 <帝国>は、かつてのローマ帝国や帝国主義と区別するために <帝国> と訳されている。1990年代以降のグローバルな秩序体制そのものである。たとえば、IMF、世界銀行、WTO、複合企業体などの 「権力」 が巨大な秩序を構成している。

 今日の危機は、国家がグローバルな市場の動きに追いつけないことだ。更に、ネグリは、もっと根源的に、企業と労働者の関係やお金の流れが変わってしまったことを語る。労働市場は変化し、金融は、労働者が生みだした富を取り込み、労働者の負債となる貨幣や証券などに変えてしまう。

 こうした流れを止めるとしたら、それは後戻りすることではなく、新しいしくみを創りだすことだ。これが、ネグリの言う「新しい民主主義」で、さまざまな領域に多数の人々が直接参加するしくみである。

 現在の代議政治は機能していない。問題は、いまの民主主義のやり方を根本から改革するかどうか。労働、生産、金融、そして富の再配分を、多数の人たちが参加して、共にコントロールしていく。そうしたしくみを創っていくこと。

 そうした独自性をもった自律性な個人の集まりはすでに現われつつある。”ウォール街占拠” 運動、スペインの”怒れる者たち”、あるいは北アフリカの ”アラブの春” など。彼らは、「マルチチュード」 であり、何をすべきかをわかり始めている。単なるデモや集会ではなく、キャンプを張って生活のあり方を含むあらゆることを共同討議している。たとえば、病院の運営では、もっと人間的な病院を組織するにはどうすればいいか、生活全般から考えている。

 今後、本格的な 「新しい民主主義」 革命が起こるとしたら、資本主義の発展が最高レベルに達した国・アメリカから始まる可能性がある。確信できるのは、そういう火種が世界各地に存在していること。日本も、深刻な危機に身をもって直面しているからこそ、何がほんとうの民主主義かを実感できている。そしてそこから、「新しい民主主義」 のかたちが生まれる可能性がある。

2 一般的なローカリゼーションにはあらず

 こうしたネグリの主張には考察すべき深い源泉がある。

 ただし、朝日の記事は、敢えてなのかどうかはともかく、考察すべき重要な視点を外している。それは、グローバリゼーションの思想との対比だ。

 ネグリはグローバルな支配体制を批判する。しかし、実は、既存の一般的なローカリゼーションには賛同していない。

 『<帝国>』 によれば、グローバリゼーションを敵視して、それにローカリゼーションで対峙するのはその2項対立設定に問題がある。敵視すべきは、グローバリゼーションより、グローバルな支配体制である。それに対峙するには新しい創造が必要だが、ローカリゼーションの主張は、<帝国>内部に実在するオルタナティブな動きを曖昧にしてしまう。また、一般的に、ローカルなアイデンティティは自律的でも自己決定的でもない。

 ここはもっと深い考察が必要だ。このことに関して十分に考察できているわけではないが、私は少なくともこう思う。ネグリの問題意識は、グローバルな支配体制とローカルな自然状態との対立を止揚するものではないか、と。民主主義をめぐるグローバリゼーションとローカリゼーションのあり方の捉え直しから出てくるものだ、と。

 これは、今現在の私の問題意識でもある。

3 「ダイアログ」 と 「連帯経済」 との接点

 最後に、今現在の私の問題意識を膨らませて、整理しておきたい。

 キーワードは、「ダイアログ」 と 「連帯経済」 である。

  私がネグリの思想に親近感を持てるのは、彼が 「参加」 や 「合意」 を必要不可欠とするあり方を語っていることだ。20万人、30万人の規模で 「自分たち」 を組織し、自分たちで自分たちを直接、統治すると言うとき、そこでは、どのように参加し、どのように同意して進めるかが問われるはずだ。私は、ネグリの思想の根底には、「ダイアログ」 による合意創造があると思う。

  まずは、教育の場で、「建設的ダイアログ」 をできる学びが 「新しい民主主義」 を担う人材につながるであろう。

 また、記事には、ラテンアメリカで90年代半ばから活発化した新たな社会運動にも触れている。これは、「連帯経済」を伴う運動である。

  人々が人間と人間、人間と社会の関係性のあり方を模索するとき、そこには、現存する資本主義経済を超えた新しい経済のあり方を伴う。それが、たとえば、社会的企業、非営利金融、地域通貨、フェアトレードなどに現れている「連帯経済」である。

 「新しい民主主義」 は、必ずや、「ダイアログによる合意創造」 と 「連帯経済」 を伴うだろう。

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 朝日オピニオン欄を読んで考えたことを整理した。

 激変の予感ある2012年初頭に、素晴らしい記事に出会えたことに改めて感謝。

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