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2012年1月27日 (金)

これからのファシリテーターって?!

 開発教育ファシリテーター講座第9講のテーマは 「学習する組織とシステム思考」。今年度のまとめを兼ねながら、開発教育システム思考研究会と連動する内容を研究協議した。ここでは、興味深かった事柄を整理しよう。

1 開発教育と「学習する組織」 ~チームづくりをめぐって

 本講座(アドバンストコース)は、「開発教育を実践するチームとはどういうものか」 を一貫して追求してきた。社会(世界)の ”開発のあり方” を考察することで社会認識を深め、さらに 「座学にとどまらぬ学び」 を志向する開発教育において、その学びと実践のための 「チームづくり」 こそが課題であった。

 私たちは、そのチームを 「学習する組織」 と考えてきた。ここでの学習とは、「学習者が、社会(世界)が最良の未来を実現するために、能力を強化し続けること」 ということになる。学習する組織のビジネスにおける諸原則 (自己マスタリー、メンタルモデル、チーム学習、共有ビジョンなど)は、そのまま教育に適用可能と考えている。

 具体的学習プロセスとしては、「ホールシステム・アプローチ」(ワールド・カフェ、AI=アプリシエイティブ・インクワイアリーなど) を体験的に学んできた。これは、”確たる知識” を前提として、共創的な対話(ダイアログ) で深める場づくりであった。

 つまり、解は場の深まりから生ずる。これに必要不可欠なのが 「ダイアログ」 だった。この共創のためのコミュニケーション能力こそが、今日の社会(世界)に、それゆえに教育に求められているのではないか? これは”アドバンストチーム”の確信ともなっている。

2 開発教育とシステム思考 ~『貧困の悪循環』をめぐって

 「学習する組織」 をテーブルに例えると3脚で支えられている。「想い」 の脚(自己マスタリー、共有ビジョン)、「共創」 の脚(メンタルモデル、チーム学習)、「理解」 の脚(システム思考)である。ここでは、システム思考が土台ともなる。

 実は、これまでの開発教育でシステム思考は決して無縁ではない。例えば、1988年に原版刊行の 『地球市民を育む学習』 にはシステム論的パラダイムの必要性が明記されている。ユニセフ 『開発のための教育』(1992) のコンセプトのひとつ「相互依存」はシステム思考そのものである。

 講座では、システム思考を使用したワークショップのフレームワークを検討した。そのプロセスに通常のワークショップとの違いはない。違いは、模造紙にFG(ファシリテーション・グラフィック) を描くに際し、意識して「因果関係図」を描こうとすることである。そこから、最重要課題(レバレッジポイント) を探ることになる。

 講座では、さらに、システム思考の代表的教材である 『貧困の悪循環』 を吟味した。教材体験のワークを行い、課題と対応策を協議した。

 課題としてあげられた主な問題点は、(1)単純化されすぎている、複雑さを複雑なまま理解できない、(2)ひとつの解に限定している、他の観点が見えない、(3)これが本当の解なのか疑問、といったものであった。

 根本的な課題であり、システム思考教材の難しさがうかがえる。教育の場では、学習者の発達段階を考慮するならば、ある程度原理的に単純化しなければならない。また、1950年代のヌルクセの経済理論に基づいているゆえに時代的限界性も見える。

 対応策としては次のような建設的な意見が出された。

A 学校教育では、生徒の発達段階に応じた複雑さを用意すべきだ。

B 解はひとつでないからこそ、循環図の批判的検討が重要。

C 抜けている要素を提示できるサムシングカードを用意したらどうか。

D ケーススタディのように、マッピングで自由に要素を書かせる前段階を重視すべし。

E グローバリゼーションを考慮した現代版への教材研究が必要。

 こうした発見は、チームがシステム思考で考察する 「新しい貧困の悪循環教材」 を作成する際の貴重なアイディアのように思われた。

3 ダイアログとファシリテーション ~これからのファシリテーター像

 開発教育ファシリテーター講座は、従来から開発教育の参加型の学びをいかに深めるかの方法として ”教育ファシリテーション” を実践的に学んできた。では、ファシリテーションはダイアログではどんな役割をもつだろうか?

 昨年刊行されたP.センゲ 『学習する組織』 の332ページから334ページには貴重な記述が満ち満ちている。

 ここでは、チーム学習でのディスカッションとダイアログの使い分けが強調されている。そして、「熟練したファシリテーターがいないと、思考の癖から私たちは絶えずディスカッションのほうに引っ張られ、ダイアログから離れてしまう」 としている。

 ディスカッションは全体構造の分析に役立ち、生産的なディスカッションならば、ひとつの結論や行動方針にまとまっていく。一方、ダイアログは複雑な問題をより深く理解することをめざす。新しい行動はその副産物である。

 「ダイアログの技の真髄は、意味の流れを体験すること、そして今言われるべきことを感じることにある」 という表現を味わいたい。私たちは、言葉の奥底にあるものを深く ”感じとる” ダイアログとそこからの 「合意創造」 のあり方を模索している。そこで、S.オットーの 「U理論」 に触れ、さらに、メンタルモデルの変化を促したA.カヘンのシナリオプランニングの可能性についても検討したのだった。

 今回見えてきたこれからのファシリテーター像は、まず、「ダイアログのファシリテーター」 ということである。今日の教師は、teacher(教える人) から learning facilitator(学びの支援者) とされるようになってきた。私たちはさらに dialogue facilitator ということを強調したい。

 加えて、「座学にとどまらぬ学び」 の実践者は、学習する組織(システム思考) による問題解決ファシリテーターである。実社会(世界)での実践そのものが関連している。

  

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