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2011年12月11日 (日)

ホールシステム・アプローチ (その2)

開発教育ファシリテーター講座(アドバンストコース)の特講に香取一昭氏(マインドエコー代表)をお迎えしての2回目。今回は AI (アプリシエイティブ・インクワイアリー) を体験した。その体験的理解の概要を紹介し、最後に 「学習する組織」 との関連を整理しよう。

1 AI(Appreciative Inquiry)とは

 直訳は 「真価を正当に評価するための探求」。「AI アプローチ」 は、問題を発見して原因を分析するという従来の 「問題解決アプローチ」 ではなく、個人や組織が本来持っている価値や未来の可能性を考察し、その実現のための課題を探求していく手法。「問題」 と 「可能性」 はコインの裏表である。内発的な動機を重視して、内包する問題解決能力や生命の活力を大切にするポジティブなアプローチである。

 AIの流れは4段階。(1) ”Discover” (ポジティブな問いのインタビューから 「ポジティブコア」 を発見する) ~ (2) ”Dream” (「ポジティブコア」 から見えてくる未来の可能性を構想する) ~ (3) ”Design” (望ましい未来を実現するために何が必要かの探求を具体化する) ~ (4) ”Destiny” (チームを作って取り組む)。

2 AIを体験する

 体験に当てる時間が限定されていたため、今回は第1段階の体験であった。内容は、AIインタビュー体験、ストーリーの共有、「ポジティブコア・マップ」 の作成である。重要なのは何を探求するかだが、今回のテーマは 「自分のリーダーシップ・スタイルを発見して開発教育に活用する」 としている。

 AIインタビューの問いは5種。それらのポイントは、①これまでチームで仕事をして最も達成感や充実感を感じたことは何か? ②その素晴らしい体験を可能にした原因は何か? ③あなたの良い点は何か? ④現在は不可能と思えても10年後には実現したいことは何か? ⑤その素晴らしい未来を実現するための第一歩は何か?

 ストーリーの共有では、①から③について、模造紙にインタビュー内容のキーワードを書きだし、共通項目を探しながら成功要因を整理した。

 「ポジティブコア・マップ」 の作成では 「チームとしての強み」 のイメージを描いた。2グループの一方は、信頼し任せるどっしりしたリーダーとして (季節柄) 『忠臣蔵』 の大石内蔵助を描き、さらに 内蔵助が 「甘くも辛くも酸っぱくもある」 トムヤンクンを食べていた。もう一方は、全員が適性を活かしながらひとつの目標に向けて力を合わせる姿として、参加者をアメフトのポジションに配置した。

 やってみての主な感想は次の通り。

 「個々人の想い、達成感をチーム力と結び付けるという発想自体が大変刺激的な試みだと思った」、「リーダーシップについて考え、議論できたのは有意義だった」、「人間のあるがままの姿をみつめながら、肯定的な見方を育ていくことは、自己肯定感を高めることになり良い手法だと思う。学校教育の現場でも活用してみたい」、「一般的な問題解決アプローチに慣れている私にとって新鮮でした。先日、A.Singhal の ”Social Change and Communication Strategy” というワークショップがあり、”Positive Deviance” というアプローチが紹介されました。共通する考え方(視点)があり、両者が合わさって、深く理解することができました」、等。

3 (考察)「学習する組織」の方法論

 ホールシステム・アプローチの代表例として、ワールドカフェと AI を学んできたが、これらは 「学習する組織」 を実現するのための方法として理解することができる。

 今回のAIでは、「学習する組織」 の原則である ”自己マスタリー” と ”共有ビジョン” と密接に関連している。ここでは、未来の 「ありたい姿」 を描くビジョンが、内発的動機を刺激し、”自己マスタリー” の組織化(ダイアログによるビジョン共有) に見事につながっている。

 また、問題解決アプローチは重要ではあるが、システム思考の観点からすると、つまり因果関係の連鎖を想定すると、そこでの原因探しは正面から切り込むだけではきわめて難しい。

 それに対して、AIは、問題と対策のアプローチとして、解決能力のコアを  ”Discover”し、肯定的に想定した ”Dream” を共有し、それを実現するための ”Design” に合意し、チームで一致協力する(”Destiny”)のである。

 先日、参加型開発から「参加」について考察した際、私たちはカマル・フィヤル氏の 「夢」 を描くことから始まる参加型開発の方法論に賛同した。

→ http://jinonuki.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-50e7.html

 この新しい参加型開発の方法論ときわめて類似していることにも注目したい。参加者の感想も好評だった。

 教育の視点からの課題としては、「状況の意識化」 と 「内発的動機」 の面を掘り下げるための検討がありうる。今回の場合は、主体的に 「ありたい姿」 を描くことと成功体験からの経験則に集約しているが、ダイアログによって 場から 「答え」 を生成する際にどう深めるかを課題としたい。

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