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2011年10月16日 (日)

ホールシステム・アプローチ

  「ホールシステム・アプローチ」 を体験した。拓殖大学国際開発教育センター 「開発教育ファシリテーター養成講座アドバンストコース」 に、香取一昭氏をお招きしての特別講義である。香取氏には3回シリーズでお願いしている。私自身、多くの学びがあったので報告しよう。

1 ホールシステム・アプローチについて

 ホールシステム・アプローチは 「学習する組織」 を具体化しようとするもの。定義すれば、「探求するテーマに関連する関係者の幅広い参加を得て、生成的ダイアログにより未来の可能性についての集合知を生み出す会話の手法」。ダイアログをベースに、共有ビジョンを持ち、未来を集合知として感得しようとする。

 具体的手法としては、「AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)」、「OST(オープンスペース・テクノロジー)」、「フューチャーサーチ」、「ワールド・カフェ」 という4つの代表的手法を総合化している。(解説書としては、近刊 『ホールシステム・アプローチ 1000人以上でもとことん話し合える手法』 をお薦めしたい)

 なぜ今ホールシステム・アプローチなのか? 

 それは、相互依存関係が拡大していながら、過去の経験から将来ビジョンを描くことが意味を持たなくなった新しい時代に対応している。今日では、従来型の組織変革手法は行き詰まり、意思決定のあり方も変化せざるを得なくなっている。

 そして、ホールシステム・アプローチは、「学習する組織」(未来を創造する能力を強化し続ける組織) 論の普及と軌を一にしてきた。

 重要なのは、未来を創造する能力である。意思決定では、独裁的でも、多数決でもない、協働的な合意創造が問われている。

 印象深かったのは、香取氏のファシリテーションについての考え方。香取氏は、参加者のなかに 「答え」 があるというファシリテーションの発想に対し、「答え」 はダイアログで生成すると語った。これは、”引き出す” より ”生成する” 側面の重視。いわば、「答え」 は場にあるという発想で、成程と思う。

 もうひとつは、ビジョンの共有に関する アダム・カヘンの ビジョン・グアテマラ プロジェクトにおける 「5分間の沈黙」 エピソード。内戦中の大虐殺のあと、土中からたくさんの小さな骨が発掘された。「虐殺のときに骨が砕かれたのか」 という質問に対して、「いや、この墓には妊娠していた女性も埋葬されており、小さな骨は胎児のもの」 だったと語られた。このとき、この一言が心の奥底に語りかけるものとなり、参加者誰もが本来の目的に気づくことになったという逸話である。(アダム・カヘン 『手ごわい問題は、対話で解決する』p.176、『未来を変えるためにほんとうに必要なこと』p.70 参照)

2 ワールドカフェ体験について

 3回シリーズの初回のワークとしては、まず、よく知られているワールドカフェ体験。

 ワールドカフェは、「問い」に関する会話の生きたネットワークを意図的に作りだす手法。そこでの会話は、協働的ダイアログを促進し、ナレッジの共有化を行う。規模の大小を問わず、参加者すべてが共通の目的を生成して、より賢い意思決定を行うことを期する。

 そこで重要なのは、対等な立場で参加すること、オープンに話し、オープンに聴くこと。

 今回のワールドカフェ体験では、あくまで基本にそって、4人のグループ構成で、3回のラウンド(座席移動)を行い、最後に全員でのふりかえりを持った。

 第1ラウンド : 「あなたが今、越えたいと考えている壁はどのような壁か?」、第2ラウンド : 「壁を越えたコミュニケーション・コラボレーションが実現したら、どのようなことが可能になるか?」、第3ラウンド : 「壁を越えたコミュニケーション・コラボレーションが実現するためには、何が必要か?」

 シンプルなワールドカフェがうまくいく要素として、香取氏は、コンテキスト(目的、参加者、日時、場所、予算など) と、「問い」 の大切さを強調。

 ファシリテーターの心得は、何をせずともその場にいる(Stey there!)こと、つまり、場を信じ、任せること。ホストは、もてなしの空間を保持する。そうしたなかで、ポジティブな問いに対して、ポジティブな未来を創りだす。。

 参加者は、問いに集中できていた。このことは、「ワールドカフェ体験、楽しかった。いろいろな意見が出て、耳を傾けるのも面白い」、「仕事でもワールドカフェを使える機会があるのでは、と思った」 といった感想に現れている。議論は、「自分の壁」と「価値観の違いによる対立の壁」 が共通項として、深められていったように思う。

 一方で、「議論を深めるという意味では難しい部分もあると思った」、「成功のカギは、参加者同士でダイアログができるかにかかっていると感じた」 という感想もある。こうした課題意識は重要である。

 ワールドカフェは、第1ラウンドでテーマについて探求し、第2ラウンドでアイディアを「他花受粉」 し、第3ラウンドで気づきや発見を統合していき、全体セッションにつないでいくのだが、それらを具体化するプロセス自体は、私たちの課題としなければならない。

 同時に、「ダイアログにおけるファシリテーション」 をどうとらえ、どのような実践的研究がなされているか? に、私個人の課題が残った。

 シリーズの残り2回の特別講義にも大いに期待したい。

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