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2011年8月 7日 (日)

ドルの行方を読む

国際通貨であるドルが揺らいでいる。「ドル時代 終わりの始まり」(朝日新聞) といったトップ見出しが新聞紙面を踊っている。揺らぐ 「国際通貨体制(ドル体制)」 の状況を、私たちはどのように理解できるだろうか?

米国経済はいぜん不況からの回復が疑わしく、政府の巨大債務の不履行(デフォルト) は回避されたものの、ついに米国債が ”史上初めて” 格下げされるという深刻な事態になった。

世界経済のファンダメンタルズの状況については、2年前に、ホームページの 「世界経済覚書」 に整理したことがそのまま生きている。(↓)

http://www.ne.jp/asahi/onuki/hiroba/etc/sri.html 

そこでは、2008年の ”リーマン・ショック” に端を発する今回の危機は、「米ドルを基軸とした通貨危機であり、資本主義そのものの危機」 と書いた。

今回の危機は単なる不況ではない。世界のGDP総額の10倍以上にも達するデリバティブ市場の崩壊なのである。要するに、とてつもなく拡大した 「虚の経済」 の崩壊である。民間の不良債権を政府が財政支出の拡大で補って救済できるほど生易しいものではない。現在は、その副作用に悩んでいる。

また、金融面でいくら紙幣を印刷してばらまいても、今のままの分配構造ではマネーの使い道は限られている。それどころか、むしろ、その後遺症(通貨安戦争~想定を超えるインフレ) を危惧しなければならない。

こうして、無理して経済成長を求めることには ”ジレンマ” が伴っている。ここでは通貨危機をテーマにしているのだが、本質的には、資本主義そのものの危機をどのように転換するかの考慮が伴わねばならない。

たとえば、雇用確保こそが私たちの切実な願いである。けれども、そもそも、景気拡大が雇用を保障するとは限らない。近年の日本でも、いざなぎ景気を超える景気拡大局面がありながら、私たちは景気回復による雇用確保を望み続けたのだった。デフレ圧力解消として経済成長至上主義の発想(”マインドセット”) にしがみつくことばかりを ”答え” とできないゆえんである。

さて本題。ドルの行方を読もう。私が考えるシナリオは、大枠としては2つ。

ひとつは、今のままの状況が続くシナリオ。現に、ドルに代わり得る通貨はない。これは、ドル安の放置であり、その間に産業を復興させ、貿易赤字を改善する。

ただし、ドル安の放置と言っても、「ドルの暴落」 を許容することはできない。米国債の威信を保たなければ、ドル体制そのものが崩れてしまうからである。

それを回避するために、アメリカは経済体質の改善に手を打つ。財政赤字の削減、新しい発展戦略 ・・・。EUの矛盾ゆえにいつまでも回復できない欧州のソブリンリスク 等はあるが、米国経済は徐々に回復する可能性がある。(楽観シナリオ)

もうひとつは、国際通貨体制の変革。円を含めた主要通貨による 「バスケット通貨」 が過渡期としてありうるが、ゆくゆくはIMFの特別引出権(SDR)に移行する。

これが ”ドル本位制” に代わる ”新国際通貨体制” のイメージだ。さまざまな紆余曲折が予想されるが、ドル本位制の矛盾は解消しなければならない。

ちなみに、前者の楽観シナリオの場合、日本から見た為替相場は、大枠として2つのシナリオが想定できよう。

ひとつは、1ドル=75円近辺。このシナリオでは、政府の市場介入(ドル買い円売り)の(可能性を含めた)有効性を考慮している。

もうひとつは、1ドル=60円近辺。政府の介入は機能せず、ドルの暴落含み。チャート上の直近高値 1ドル=124円(2007年) の半値水準を考慮している。

これまでの円高局面は5年間が最長だから、それを考慮すると、特に後者では、2012年が正念場となろう。

ただし、繰り返すが、”エネルギー革命” をはじめとしてイノベーションは期待しても、経済成長の追求は ”短絡” である。もっと別に求めるべきものがある

その新しい 「持続可能な社会発展」 のあり方については別の機会に。。

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