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2011年6月 2日 (木)

「地域と地球をつなぐ学び」 再考

昨日の続き。「地域と地球をつなぐ学び」 とは、どのような学びを念頭に置いているだろうか? 改めて再考してみよう。ここでは、開発教育の歴史におけるひとつの流れを考察することになる。

私がこの ”切り口” を最初に文章化したのは、2000年4月の開発教育協議会(現DEAR=開発教育協会) 『開発教育ニューズレター No.84』 の 「理事オピニオン」 欄への寄稿であった。こう書いた。

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「開発教育って何だろう? 最近、今更のようですが考える機会が多くなりました。開発概念が拡散するなかで開発教育をどのように捉えるのか? また、”新しい現実” に対応しなければということも言われています。では、その ”新しい現実” をどう捉えるの?

・・・

開発教育の学習では、世界の開発問題を直接提起するアプローチと、身近な事柄からのアプローチがとられてきました。前者の困難は先に触れた (提起する開発問題が学習者との関係性を実感しにくいこと) 通りであり、後者はなかなか問題の本質に辿り着けないまま終わってしまいがちでした。

そうした経験の上に立って、私は足元の開発問題をみすえる方向を重視したいと思います。開発教育で ”日本の開発問題” がなおざりにされてきたのはなぜなのでしょう?

地域の開発問題には世界の開発問題と同様の構造的問題性が含まれているのであり、何よりも、学習者は現場を通して強烈な問題意識に達し得るでしょう。

足元の開発問題を問題としてどう捉え、自分との関わりをどう捉えるのか? そして、どのような課題克服の方法があるのか?自分はどう対処するのか? ・・・ 全国各地で、地域の人たちと共に築く独自のカリキュラムの創造が今こそ問われていると思うのです。そうした総合学習ならば、学校の中でも多くの協力者を得られるでしょう。

地域の開発問題学習には 「地球規模で考え、地域で行動する」 ための見通しが重要です。そうした見通しを持つことが開発教育の真髄です。地域学習には、地域と世界のつながりの構造認識への歩みが伴うはずです。

・・・

子どもたちが地域の問題に取り組むなかで、「問題意識と考える力」 の獲得から、知らず知らずに 「世界がわかる学び」 にまで深めていくことができる、そんな開発教育の具体化を模索しています。」

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これが教師としての私の模索の道標であり、提案だった。10年以上前のこの課題提起は、グローバリゼーションが進展する ”新しい現実” に対応した教育として考えていた。グローバルな時代だからこそ、地域に意味があるように思えた。

私は1990年代の10年間、開発教育協議会主催 「開発教育ワークショップ」 に、田中氏や山西氏らと共にスタッフとして関わったが、それは事実上 「教材作成合宿」 であった。ここから、身近なカレーやコーヒーなどを素材として世界を考える教材が輩出した。ただし、これらは 「地域と地球をつなぐ」 教材ではあるが、足元の地域を掘り下げてはいない。

本当に 「地域」 を掘り下げた教材は、2005年の 『貧困と開発』 (DEAR) で初めて実現したと思う。DEARでの 『つながれ開発教育~学校と地域のパートナーシップ事例集』(2001) の作業を経た成果でもあった。この教材は、「開発」 とは何かを改めて問うている。そして、人間開発の概念を軸にしながら、経済開発だけでない社会のあり方を問題にしている。そして、もっとも重要なのは、社会のあり方が問われるのは私たち自身の問題であるから足元を掘り下げようとする教材だったことである。遠回りのようでも、まず地域で、当事者性をもって参加し、「開発」 を学ぶのである。

この延長として、2008年に 『地域から描く これからの開発教育』 (新評論) が出版された。まさに、”新しいアプローチ” の確立。さらに、2000年代に登場したESD(持続可能な開発のための教育) は、地域重視の開発教育と深く連動するものだった。それゆえに、環境教育だけでなく、もっと多面的なESDのカリキュラムを考察し、実践例を添えて世に問うたのが、2010年 『開発教育で実践するESDカリキュラム』(学文社) である。こうした流れを共有したいと願う。

こうした流れは今後どのように展開するだろうか? 私自身の関わる研究会活動は、システム思考の可能性とESDの実践。そして、思考を深め、行動につなぐ教育ファシリテーションの深化。 ・・・ 研究仲間と明るく闊達な研究を志向している。

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コメント

おぬき先生、今年も大学のひとコマで「貧困概念図」「レーダーチャート」「開発ランキング」に取り組みました。
時間が限られているので、Commuの活動も理解できるようにアレンジしています。
私は、この教材が一番好きで、一番良く使っています。
議員さんとも取り組んだり、先日は某NGO団体の会員の方とも取り組みました。

そして、他の教材との反応の違いは、「内省がうながされる」ことです。(私の経験からは)

また、「自分の貧困さに気がついた(ネットワークが希薄である)」「土木関係の方が、公共工事以外の開発があるとは!!!社員を連れてきて勉強させたかった」とか、反応もとても興味深いです。

次回は、地域包括支援センターと社会福祉協議会職員の研修で取り組む予定です。
まさしく、日本の地域の開発に向き合って、そこにある「構図」を認識して国際協力の場にある同じ構図に気がつく、そんなことも視野に入れて取り組んでいます。

貴重な教材、さらなるアレンジ版を期待します!

椿原さん、この教材を使いやすくアレンジして、「この教材が一番好き」 というまでに活用していただいているとのこと、何より嬉しく受け取りました。(感謝)
改良の余地はあるので、椿原さんのコメントを励みに、アレンジ版を出せたらと思います。
私の改訂案は、システム思考のワークショップに役立つESD教材たること。
知らないうちにシステム思考とESDの視点で思考し、行動につながるような教材です。

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