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2011年1月23日 (日)

第9回 開発教育システム思考研究会

第9回のテーマは 「学習する組織」。検討する文献は、ピーター・センゲ著 『最強組織の法則』(徳間書店、1995)。以前はともすれば取っつきにくく感じた本書がはるかに読みやすくなっています。全員が、事前に、今回のテーマのために 『チーム・ダーウィン』(熊平美香、英治出版、2008) を読んでいることが寄与しているでしょう。

センゲの代表作である本書は、システム思考を根底にした学習する組織論ですから、今回 「学習する組織」 を読み解く視点とすることで、その全貌をはっきりと理解できる段階に達したと考えることができそうです。

検討の軸は、第3部 「ラーニング・オーガニゼーションの構築」 (第9章 「自己マスタリー」、第10章 「メンタル・モデルの克服」、第11章 「共有ビジョン」、第12章 「チーム学習」)。

例によって、ゼミ形式で、担当者を決めて理解の確認をしていったのですが、もっとも時間をかけたのは 第9章 「自己マスタリー」 と 第10章「メンタル・モデルの克服」です。企業経営を、学校経営あるいは学級運営、授業づくりに当てはめたり、さらに、開発教育における問題分析の方法論にまで拡げていったのでした。

さて、そもそも、「学習する組織」 における 「学習」とは、多くの情報を得るためのものではなく、むしろ、人生で真に望んでいる結果を獲得するための能力の開発です。(p168)

「自己マスタリー」 とは、人生を受け身でなく創造的に生きる意欲に関わります。自分にとって何が重要なのか 常に明らかにし続け、さらに、今の現実をはっきりと把握して、望むこととのギャップに向き合う姿勢です。つまり、大切なのは、そこでの「クリエイティブ・テンション」に向き合うということ。

これは、従来の 「階層的な組織」 (上意下達、歯車としての労働者) のなかには生じにくい主体的な学習意欲です。また、「クリエイティブ・テンション」 はその中心原則ですが、現実には、否定的な見方による抵抗感が「クリエイティブ・テンション」の維持を阻んでいます。

教育に照らせば、学習者の 「学習」 とは何か、「学習意欲」 をいかに喚起するかが問われましょう。ここでも、「学習」 とは単に知識の習得でないことを認識できます。「生きる力」のコンセプトにつながります。そこに 「興味・関心」 や 「生き方」 がからむことも重要な観点となります。

この章のポイントとしては、「ビジョン」と「目的意識」は異なるという観点に着目。(p177)

ここでの 「目的意識」 とは (自分は何のために生きているのかに通ずる) 方向性であり、「ビジョン」 とは目的地 (望ましい未来の映像) とされます。第11章の 「共有ビジョン」 とは、共通の目的地 (望ましい未来像) ということになります。ただし、「ビジョン」 は 単純な ゴールや目標とも違い、あくまで内部から湧き出るものでなければなりません。

第10章の 「メンタル・モデル」 は、「心に固定化されたイメージや概念」。「自己マスタリー」 が警戒すべき 否定的な 「エモーショナル・テンション」 と並んで警戒すべき側面があります。

『チーム・ダーウィン』 でも、「私たちは思い込みの世界の中で生きている」(p63)と表現され、そうした先入観に対処して互いの「ビジョン」を共有することで、チームとして結束でき、成長していったのでした。

次に、研究会では、開発教育の問題分析の方法として以下のように考察しています。

私たちが社会を見る際には、物質に関わる 「下部構造」 と 精神に関わる「上部構造」 を想定できる。唯物論で下部構造が上部構造も規定するとし、その下部構造の矛盾を説いたのがマルクスだったが、私たちの研究分野では、システム構造の心底に 「メンタル・モデル」 を想定するように、上部構造を重視している。

いや、下部構造と上部構造の相互作用が重要。そして、ここで留意すべきが 「変化」 の概念。下部構造は科学技術の進歩などで大きく変化していく。それに対して、「メンタル・モデル」 は、既成概念や思考習慣の世界であるため、ときに時代おくれとなる。そこに、下部構造内の矛盾ではなく、下部構造と上部構造との間に矛盾が生じる。この矛盾を克服できない組織は 時代遅れ となり、「生き残る」 ことができなくなる。

どのような組織もこうしたリスクを孕んでいる。ここでは、単に変化に適応するだけではなく、創造的対応が求められる。主体的な 「望ましい未来づくり」 である。

・・・ このような観点は、研究会が開発教育で社会分析する際にも重要な視点となります。下部構造への経済構造分析も重要だが、メンタル・モデルと現実との矛盾の分析が、同じように重要ということです。

教育との関連性についての考察も触れてきたとおり。

研究会の参加者は、教師としての自分が、どうやったら意欲的なグループ学習をファシリテートできるか、に引きつけて考察していたそうです。

教育学者・佐藤学氏が提唱する 「学びの共同体」 との違いは? という観点で考えていたという感想もあります。

次回は、本日のテーマである 「学習する組織」 の講演会を軸にした 「拓殖大学 開発教育研究フォーラム」 に参加するかたちとなります。講演は、『チーム・ダーウィン』 の著者・熊平先生(日本教育大学院大学学長)。

「学習する組織とは何か? 学校教育との関わりはどうなのか?」 という基調講演のあと、開発教育にとって 「学習する組織」 はどう関係するかについて、「開発教育ファシリテーター養成講座」 修了生の期を超えた研究を行います。実践的なワークショップと大きな成果を期待します。

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