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2010年12月21日 (火)

第8回 開発教育システム思考研究会

今年最後の第8回研究会は、「システム原型」 がテーマ。システム原型を知ることによって、システムのよくあるパターンを認識し、そのループの描き方を確認すること、そのうえで、開発教育の対象となる事象を出し合ってみることがねらいでした。

前半は、今後の日程の確認。

今回が「システム原型」、明けて1月22日に「学習する組織」、加えて2月26日に、拓殖大学国際開発教育センター主催フォーラムに合わせて、「学習する組織」 をテーマとした講演会とワークショップを予定しています。

「学習する組織」に関しては、次回、参考図書である 『最強組織の法則』(Pセンゲ、徳間書店、1995) を軸に、2月の講演者・熊平先生の 『チーム・ダーウィン』(英治出版、2008)  を読みます。

熊平先生には、「学習する組織とは」 から始めて学校教育に触れていただきますが、開発教育との関わりは別課題です。そのあたりを、講演後のワークショップで検討することになります。具体的なワークのテーマは次回の学習後に決定することに。。

また、年度末報告書についても検討。「システム思考研究で何を得たか、開発教育とシステム思考融合の今後の見通しを含めて」 を大枠の報告テーマとするのが合意事項。発展として、具体的に既存の教材を修正してみる~新作を創ってみるなどは大歓迎です。

これに関連して、今年度はシステム思考そのものを学習し、開発教育との融合の可能性を探ってきたけれど、どうだったかを検討しました。

研究会が開発教育の ”構造的理解” のツールとして期待したことはどこまで可能性を見いだせたか? が研究会全体での総括内容ですが その他、各自が期待したこと、たとえば、開発教育の 「知る~考える~行動する」 の三段階で、よりよき社会づくりにつながる活動に向けて、レバレッジポイントの考え方はどこまで有効か? などです。

ここでは、循環ループに関して、通常の因果関係図のアレンジの可能性、5回くり返して深める「なぜ?」 をループにつなぐ可能性、市場メカニズムを市場サイクルとして認識する可能性、そして分析方法に関しては、SWOT分析~サイクル分析~ロジックツリー等による対応の手順の有効性、水平思考をシステム思考で解釈する可能性、”ありたき姿” と現実とのギャップを埋める手順の有効性、内部要因としての開発問題を外部要因とのつながり分析でどこまで構造的に捉えるかの可能性、その他、場づくりとしての「学習する組織」概念の可能性など、さまざまな可能性を語り合うことができました。

こうした内容は、この春に研究を始めた当初は考えてもいなかった視点です。取り組んでみると、ビジネスレベルのシステム思考との直接的な融合は難しい面があり、戸惑うことも多いのですが、一歩また一歩と前進してきたことを実感させられます。

しかし、まだ 「飛べない」 でいるのが事実。このもどかしさは、来年度の第2ステージで、国際開発論とのつながりを研究することで晴れてくるのかもしれません。そこから、「日本の開発問題」 との兼ね合いにも発展できるでしょう。

前回、研究会は、これまでの教材に対してシステム思考的見直しをし、新しい開発教育のあり方を提案していくという 「ありたき姿」(ビジョン) を描きましたが、その具体化にはもう少し時間がかかると思われます。そのプロセスをどう描くかが課題となっています。

「ビジョン」 と言うなら、研究会の開発概念に対する「ビジョン」の確認も実はできていない。この 「共有ビジョン」 こそが、第2ステージにおけるもっとも重要な礎となりましょう。

私個人は、この段階で、『経済成長なき社会発展は可能か?』(Sラトゥーシュ、2010) や 『連帯経済』(西川潤編、2007) あたりを一度は押さえておきたいと考えています。

後半は、本題のシステム原型について。

かなり時間がおしてしまい、サブテキスト 『システム・シンキング入門』 にある6つのシステム原型をストーリーとして理解し、開発教育との関わりを考えるというだけで時間切れ。

まず、システム原型を、バランスループ型(対策優先)と自己強化型(拡張優先)に分類。前者は、「応急処置の失敗」(目先の原因対策)、「問題の転嫁」(一時しのぎ対策)、「エスカレーション」(対策の悪循環)の3つ。後者は、「成功が成功を生む」(格差拡大の悪循環)、「成長の限界」(目先拡張)、「共有地の悲劇」(目先利益追求)の3つの分けられます。

ストーリーの理解には 『なぜあの人の解決策はいつもうまくいくのか?』(枝廣淳子/小田理一郎、2007)を使いましたが、かなり役立ちました。

まず、前者の 「応急処置の失敗」は、直線的な原因排除の対応がかえって事態を悪化させる現象。あらゆる規制が具体例になりえます。問題の因果関係をすぐ近くに求めてしまう失敗ですが、直線的に求めた原因は関連する要素の結果でもあるという判断がシステム思考です。「なぜを5回くり返す」のは因果は連鎖するという考え方によるわけで、各々の因果関係にループが成立する可能性があります。

「問題の転嫁」は、一時しのぎの解決策でかえって自分の首を絞める現象ですが、途上国の累積債務や日本の赤字国債を検討。クレジットカードの支払いを借金で返済していく図式です。

「エスカレーション」は、互いの対策が対策競争となり、悪循環する現象。自由経済そのものです。際限なき価格競争は管理価格やカルテルにつながります。世界の軍拡競争もエスカレーションの典型。前半に話題となった市場経済のメカニズムは、エスカレーションを応用するかたちでループを描くことが可能でしょう。

次に、後者の 「成功が成功を生む」は、強い者が有利な立場を保持して、差がますます拡大する構造。開発教育が問題とする格差拡大そのものです。これには、制度の変革、税の対応などが問われます。話題はここにおける「公正」 とはどういうことかということ。それを機会の均等の実現ととらえ、それは可能かを考える方向に。。

「成長の限界」は、拡大路線がキャパシティを超えてしまうとかえって自滅する構造です。あらゆるバブル現象が相当します。資本主義経済では、よくあるシステムとしてバブル経済を避けられず、ひいては生産過剰から経済恐慌につながる。信用膨張により金融恐慌も同類です。

「共有地の悲劇」は、共有資源に限界があると分かっていながら、その資源をなくなるまで取り尽くす構造。石油採掘、森林破壊、過剰漁獲などの具体例がすぐに浮かびます。

ここであげた6つの原型は、事象のパターン分類なのですが、特に自己強化型拡張ループからの原型は、システムの根本の構造を説明する原理であると考えられます。

こうしたシステム構造(ループ図)のどこにレバレッジポイントがあるか、その対応としてはどのように考えることが妥当なのか? ・・・ という具合に、もっと時間をかけて検討したかったのですが、今回十分にできなかったことが悔やまれます。

こうした視点は今後、第2ステージに向けての重要な課題/宿題としておきます。

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