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2010年11月24日 (水)

第7回 開発教育システム思考研究会

第7回は、研究会テキスト 『問題発見力養成講座』 の著者・高橋先生をお招きしての ミニ講演~質疑応答~ワークショップ。お招きするのはこれで3回目ですが、今回はこれまで以上に実のある議論ができたという手応えがあります。したがって、今年度の大きなヤマであったと思われます。

前半 : ミニ講演~研究協議

1.テーマの立て方

システム思考でまず留意すべきはテーマの立て方である。問題を発見し、それを現状分析するのは、その問題を解決するため。できるだけ具体的なテーマ設定が望ましい。

システム思考に限らずとも、サブタイトルで考慮すべきは、”To~By~Using” という構成要素である。”To” は目的(何のために)、”By” は主体(どんな立場で)、”Using” は手段(どのような視点で)ということだが、テーマにはこうした構成要素が含まれる。

この観点で前回検討したという 「日本の貧困問題」 というテーマを検討すると、そもそも「貧困」の定義が不明瞭ではないだろうか。さらに、貧困問題を解決するという壮大なテーマでは、その現状分析は 「分析のための分析」 に終始しかねない。現状分析とは、対象となる問題を解決するためのものだが、そこでの主体は誰で、どのような手段かの見通しも立て辛いテーマになっているように思える。

「ワーキングプア」 ならどうかということだが、その問題設定なら、「貧困」 よりは具体的でベターだろう。

2 レバレッジポイントを特定するためのポイント

レバレッジポイントは、ループ図での 原因(独立変数)と結果(従属変数)の関係で、複数の従属変数を従えている独立変数がレバレッジポイントである可能性が高いと考える。つまり、矢印が集中しているとレバレッジポイント候補である。

システム思考の有効性は、このレバレッジポイントの有効性ということでもある。

ただし、企業であれば、参加者は当事者として考えるので問題点等が明確に出やすいが、開発教育ではその当事者性が欠如しがちである。それゆえに、「分析のための分析」が教育活動となり、ここにジレンマが生じる。

システム思考による開発教育では、参加者が収斂できるテーマを選ぶ。そこでは、解決する主体を設定することが前提である。リアリティのある身近な問題へのアプローチが望ましいことになる。

システム思考を取り入れる意義は、循環性で現状を見える化して、レバレッジポイントを探るところにある。そこで、俯瞰的に見ること、水平思考等で発想の転換を図ることを促進できることがメリットである。

内部と外部に分ける発想も重要である。そこでは、空間的な問題だけでなく、時間的な歴史の問題も絡んでくる。そして、内部のループだけでなく、外部との矢印関係が世界とつながる視野につながる。仮説としては、その外部とつながる内部変数に発想の転換が求められ、レバレッジポイントになり得ることも考えられる。

システム思考は、問題の現状を構造的に見ることを可能にするが、開発教育のシステム思考で世界を構造的に分析する学びそのものは不可能である。

当事者意識が持てる(地域の)問題で、世界ともつながり、それを循環構造でとらえてループ化(見える化)し、レバレッジポイントを探求して行動につなぐ学びが、システム思考による開発教育の新しい構想となる。これらが、今ある教材との差別化の観点である。

ただし、時間に追われた短絡的な結論はかえって危険である。

安易にレバレッジポイントを出さないことこそ重要であり、熟慮の末の結論と行動では、常に副作用の吟味をして、妥当性を検証していくプロセスも学びの一環となる。

後半 : 前回の疑問への質疑応答~研究会の「ありたき姿」表現ワークショップ

3 質疑応答

Q SWOT分析で出てきた変数と、ループ図で使用する変数の違いについて

A ループ図を作成する際に、当事者としての判断でわかりやすくする。なお、矢印の説明で、「S(same)」と「O(opposit)」の付け方は作成者による。基本は、同じ方向を示す場合に「S」、反対方向を示す場合に「O」だが、プラスの方向で「S」、マイナスの方向で「O」という書き方もある。

Q レバレッジポイントの特定方法について

A 先に示した通り、多くの結果(従属変数)を従えている原因(独立変数)に着目するのが筋。原因から結果を考えるのでなく逆であるから、ここではハイブリッドな見方をしている。

Q 「ありたき姿」を描く好循環サイクルでのモジュール追加とその検証について

A いったん現状分析のことを忘れることが大切。ゼロベースで構想すれば、新しい要素が出てくることは何の矛盾もない。ありたき姿を、タイムスケジュールに落とし、ガントチャート(管理工程表) を描いて ”To do” につないでいく。

4 ワークショップ

最後に、ミニワークとして、「研究会のありたき姿 2010.11.20」 を描いた。そこには、以下の通り、4つの段階が描かれた。

第1段階 : 土台作り(インプット) → システム思考研究

第2段階 : 実践へのプロセス → 開発教育、開発教育教材、ワークショップの全面的見直し。

第3段階 : 実践→ワークショップでの普及~開発教材作成~教育実践

第4段階 : 発表(アウトプット)→新しい教育のあり方の集約~本を出す

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