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2010年7月15日 (木)

第4回開発教育システム思考(拡大)研究会

第4回研究会は、1期から6期までの 「拓殖大学国際開発教育ファシリテーター養成講座」  修了者 および 現7期の受講者に幅広く参加を呼びかけた 「拡大研究会」 でした。研究会テキスト(『問題発見力養成講座』)の著者・高橋浩一先生の講演とワークショップでした。

第1部の講演テーマは、「システム思考とは? その教育における可能性」。第2部の実習は、「因果関係ループ図を描く」ワークショップ。そのあとの ふりかえり は、「開発教育とシステム思考融合の可能性」 についての研究協議です。

14:00に開始して、終了したのは18:30過ぎ。。またたく間に時間が流れたことは驚く程です。某参加者曰く、「非常に濃密な時間をいただいたことに感謝いたします。因果をループで表現することは刺激的でした。今度、いろいろな場で練習してみます」。4時間半もの間、いやな顔ひとつせず研究協議にお付き合いいただいた高橋先生に心より感謝致します。

第1部の講演について。

講演内容の紹介は、これまでの研究会で整理してきた内容とダブりますので、省略します。大きな流れとそこでのポイントは、(1)これまでのロジカル・シンキングとシステムシンキングの違い、特に「線的な把握」と「循環性の把握」の違い。(2)歴史的展開で、1950年代以降、従来の要素還元論に対して、要素間の関係をみる「システム論」が台頭したこと。(3)今日の展開で、システム・ダイナミクスとシステム・シンキングの違い、特に「定量分析」と「定性分析」の違い。(4)システムとして捉えることによる「目に見えない構造の見える化」の意味、特に「構造レベルに働きかけるレバレッジ・ポイント」の有効性。。などでした。

質疑応答では、いきなりハイレベルな質問が出てきました。因果関係ループ図の例示で、因果の特性をS(Same, プラスの影響)とO(Opposit, マイナスの影響)として表現しているが、その例示の判断に疑問があるというもの。マイナスの変数からマイナスの変数に向かうとき、Sとして表現することへの違和感です。鋭い質問で考えさせられました。その場は ”解釈の違い” ということでしたが、実はこれは、Sを 「プラスの影響」 ではなく 「同じ方向性」 として理解することで解決します。調べた結果もやはりSで良いようです。(一般的には、専門的なSやOの記号がなくても循環サイクルは成立します)

また、システム思考の結論は絶対的なものでなく、アプローチの差で違った結論が出ることがありうることが話題となりました。これについては、いかに深めるか?が問題になります。今回は、多様性(視点あるいは立場)をもった参加者構成で深めていくことが重要というのが結論でした。

第2部のワークショップについて。

ワークは2段階で、まず導入として、「ワークライフ・バランス」 の好循環サイクルを描く実習をしました。次に、より複雑な 「中国の資源外交」 をめぐっての因果関係ループ図を作成しました。

ここでは、出てきた主要な論点を整理しておきます。

論点1:好循環サイクルあるいは「ありたき姿」のモデルを描くことの意味は何か?

→システム思考においては、現状を捉えて問題を探し出す方向と、あるべき理想像を描いてから、逆照射して現状の問題を探し出す方向とがありうる。

論点2:そもそも、自然システムなら循環性で捉えることができるが、社会システムでは、どこまで有効だろうか?

→世界あるいは社会は、あらゆる部分が複雑なバランスを保つ関係でつながっている。世界あるいは社会は、問題の相互関連も含めたシステムと捉えることができる。

→実は、開発教育における「相互依存」の概念は、「世界はあらゆる要素-人々、出来事、潮流、場所-が相互依存したシステムである」(ユニセフ『開発のための教育』)ことを前提にした概念であることに今更ながら気づきます。

論点3:因果関係ループ図を描くにあたってうまくいかない場合、どうしたら良いか

(1)~ループにすることを急ぎすぎているのではないか?

→開発教育のグループワークでは、従来のロジカルシンキング(ロジックツリーやMECE)やKJ法で 「相互関係図」 を描くことにはなれている。このベタの部分がしっかりできていないうちにループ化しようとすることには無理がある。

(2)~各モジュール(グループ)ごとのループ自体がしっかり作れていない?

→小さな単位であるモジュールのループをしっかり作って、しかるのちに、結節点をどう作るか工夫することがループ図作成のひとつのコツだろう。

論点4:システムのパターンについて、もっと理解している必要がある。

→これは、次の感想文に含まれていた発想です。「”正解”を求めるよりも”プロセス”が大切ということを理解してもらうことと、パターンをモデル化したものを示すことをご検討いただけたらと思います」。

論点5:システム思考は、変数が変化するとどうなるかの検討が有効である。

→これは、システム思考における時間的変化の概念ですが、最重要課題(レバレッジ・ポイント)を探し出す際のプロセスとなりましょう。

・・・ 以上、システム思考の基本的前提、因果関係ループ図作成上の課題等に関連する論点について整理しました。このような論点は、教育現場の実践での方法論でもあります。

システム思考で「循環サイクルを真理とする」ことは前提です。「中国の資源外交」という非常に複雑な現象に挑戦したため、この前提の具体化の難しさに戸惑う反応もありました。以下は、参加者の感想文からの幾つかの抜粋です。

A : 身近なテーマでループ図を書くことは、初級者には分かりやすいなと思いました。理想のループを描くこと&現在起きている問題をどのように解決していけるかということについて、全体を通して考えることで、見えてきたり分かったりすること・・・確かに!!と思います。

B : システム・シンキングについて理解が深まりました。もやもやしていた部分がすっきりしました。具体的には、「物事を俯瞰するために特化したツールであること、レバレッジ・ポイントを探す重要さ」です。ありがとうございました。

C : 事前に、個人的に準備をし、ループ図を作ってきましたが、実際にグループで話し合うと、自分の構造の甘さがよくわかったし、話し合うことは確実に事実に近づく(100%ではないにしても)という実感をもった。

D : 複雑にからみ合った問題を図化できるのは興味深いと思いました。

E : みんなでやると楽しいが、なかなかまとまらない。高橋先生のものはよくできている。モジュールで分けて学習させるのはいいかもしれない。

F : たいへん勉強になりました。教育現場でいかに使うかを考えながらやりましたが、高校生なら、いくらか説明すればできるような気がしました。

G : ありがとうございました。ロジカルシンキング、システムシンキングは開発教育に使える!と思いました。

私自身も、現在、「システム思考で学ぶ開発教育」の可能性に関して、確信に近いものを持つにいたっています。そのためにも、今回の論点を踏まえて、日頃の相互関係図からの応用としてどうループ化できるか、あるいは、そこでのプロセスをどう重視するかが当面の課題と考えます。

明日は、研究会の今後に向けて、今回の「拡大研究会」の成果をまとめます。

  

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