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2010年6月24日 (木)

ファシリ講座第10講より~開発経済学入門

私たちの講座が 「開発教育ファシリテーター」 の素養で重視しているのは開発経済学です。ここで要求するのは社会の現実を社会科学的に見ることです。私はアマルティア・センの思想を特に重視する者ですが、彼を理解する場合も、たとえば 「人間開発」 の考え方において、 「経済」 は 「健康」 「教育」 などの土台となります。ここでは、昨日の講義内容の概略をまとめておきましょう。

講師は、本学の渡辺利夫先生。2回4時間(講義は実質2時間半)に亘る集中講義です。テキストは、今年2月に第3版が出て内容を一新したばかりの 『開発経済学入門』(東洋経済新報社)。この書では、基礎の基礎 が第1章「マルサスの罠」で、貧困のメカニズムが原理的に解明され、そこから、第2章「人口転換」から4章「緑の革命」までが直接つながります。講座では、この入門部分についてのポイントを解説します。

ここまでで、人口と生産(技術)の原理的理解ができれば、テキストは、第5章「工業発展Ⅰ」から第7章「貿易と海外直接投資」までの発展的理解に進みます。ここでは、農業から工業へ、国内から海外(グローバル)へと視野が広がっていきます。特に、「輸入代替工業化」から「輸出志向工業化」への世界経済の歴史を原理的に理解していくことになります。第8章以降は、応用として、アジアの現状分析がなされています。

1 前回の復習: 人間の生存にとって、原理的に重要なのは 「人口」と「食糧」 の関係であること。幾何級数的に増加する人口に対して、収穫逓減が働く農業生産が追いつかないことが 「貧困のメカニズム」 。今日のアフリカやアジアの最貧国は、今なおこの 「マルサスの罠」 のなかにある。けれども、人間はこの 「貧困のメカニズム」 のなかに安住する存在ではない。ここでは、それがどのように展開してきたか(今後どのように展開できるか)を原理的に理解していく。

2 まず、「人口」について。人口の推移には4つの局面がある。「高位安定期」(出生率・死亡率ともに高い)、「前期増加期」(出生率高いが、医療導入で死亡率急減=人口爆発)、「後期増加期」(出生率低下、医療と食糧の更なる充実で死亡率下限へ)、「低位安定期」(所得水準の向上が出産の不効用(費用)が効用を上回って出生率・死亡率ともに低水準)。ここからみると、アジアは、すでに死亡率は下限近くまで達しているが、所得水準と出生率は強い逆相関にあるから、アジアの人口は今後も減少していくはずである。さらに、人口の少子化とならんで高齢化が著しく進んでいることもアジアの特徴である。

3 次に、「食糧」について。アジアの農業は、人口増加と収穫量増加との「競合」を余儀なくされてきた。そして、この競合に打ち勝った技術革新が 「緑の革命」 であった。アジア在来のインディカ種は、灌漑施設の貧弱な地域で、乾期の水不足を回避しながらの稲作は、深水で草丈の高い水稲種である必然性があった。品種改良のテーマは、草丈が短くて太い水稲種の開発である。1960年代にこれに成功し、灌漑設備と化学肥料で爆発的に収量は増加した。「緑の革命」はここからの長期的な品種改良のプロセスである。これらは、人間が「貧困のメカニズム」を克服するための「誘発的技術進歩」とも言える。

4.グループ討議: 選択題1「少子高齢化は社会に何をもたらすか?」、2「食糧問題はどうすれば解決できるか?」 → 各グループ各々の討議がなされたが、基本的にどのグループも、「少子化」と「高齢化」のメリットとデメリットをマトリックスで考える傾向が見られた。結論としては、「二極化」と「格差」が拡大するというグループ、メリットとデメリットは収斂していくとみるグループ、社会構造の変化が不可避とみるグループ等、多彩な結論が導かれていた。

5 近年の重要課題について: 足元の極めて大きなテーマとして、「外交・安保をめぐる問題」と「急激な少子高齢化をめぐる問題」があるだろう。今回は後者について考えている。明らかに現在の産業~制度は成り立っていかない。少子化対策を伴いながら、どのように新しい社会を組み立て直すかが問われている。そして、持続可能な社会制度の構築は極めて困難である。現状のままでは、「世代間対立」が激化し、爆発することが憂慮される。そして、もっと根底を探れば、そこには「地方の共同体崩壊」が見てとれよう。このことは、日本社会そのものの根底の崩壊につながっている。

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