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2010年5月11日 (火)

開発教育ファシリテーター養成講座の春合宿

5月8~9日は、開発教育ファシリテーター養成講座の春合宿でした。この講座は拓殖大学の公開講座で、所属する国際開発研究所(国際開発教育センター)が主催しています。年間講座なので今は導入段階ですが、合宿をして1年間の土台を固めます。いつもの茗荷谷キャンパスでなく、”風光明媚”で空気もきれいな高尾キャンパスの国際交流会館を使っての1泊2日でした。

さて、私が担当したのは「開発教育ファシリテーション入門」です。2時間の持ち時間しかなく、参加型を意識しつつも、ちょっと詰め込みすぎてしまいました。終了後、質問の多かった部分をフォローするため、講座のMLに再整理して送信しました。テーマは「開発教育+ファシリテーション+開発経済学の相互関連性」の部分が中心です。これについて、自分の復習を兼ねて引用しておきます。(若干修正)

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皆さま、小貫です。合宿お疲れさまでした。内容と方法に関する基本と人間関係づくりをねらいとしていましたが、肌に合いそうだと実感していただけたら、ねらいはほぼ達成です。

ところで、私の担当した内容に関しては、合宿で唯一小難しい内容で、理解しかねたと感じた方も少なくないと案じています。

例えば、テキストに絡めて3人の学者・実践者の名前を出しましたが、講義では解説したというより、フレームワークはつけてあるから、この位置づけで早めに読んでいくことを薦めます・・・という「説明」で終わっています。ですから、補足として、ここに推薦したい入門書を書いておきましょう。

アマルティア・センは、『貧困の克服』(集英社新書、2002)を。できれば、前期の「人間の安全保障」の授業の予習にもなるので、『人間の安全保障』(集英社新書、2006)も。パウロ・フレイレは、『被抑圧者の教育学』(亜紀書房、1979)。ロバート・チェンバースは、『参加型開発と国際協力』(明石書店、2000)。ただし、最後の本は600ページ近くもあり、実は6~8章さえ読めば済むと思われるので、買うより借りた方が良いかもしれません。

もうひとつ補足が必要と思うのは、今回質問の多かった部分についての再整理です。つまり、開発教育とファシリテーションと開発経済学の相互関連性について、開発教育の原点をまず理解するという視点でまとめておきます。

<初期開発教育>

開発教育: 貧困を課題とする課題解決学習 ~ 開発経済学: 貧困の克服を課題とする経済学

まずここで、経済的欠乏を課題とする初期開発教育とその克服をめざす開発経済学は密接に関連しますね。お話したように、このあと開発概念は多様化し、ファシリテーションが参加型開発との関連で重要になってきます。

<今日の開発教育>

開発教育: 多様な開発問題に取り組む課題解決学習 ~ ファシリテーション: 参加型開発を支援するファシリテーター ~ 開発経済学: 多様な開発問題に対応する経済学

今日では、開発教育も参加型学習を支援するファシリテーターとしての教師が重要になっています。

如何でしょうか? こうした筋書きが歴史的経由を踏まえた3者の関連性です。

ただし、開発教育のアイデンティティからして、開発教育にとって、多様な開発問題の軸は「貧困問題」なのであり、センによってパラダイム転換がなされた多様な開発問題に対応する開発経済学においても、経済分析を社会科学的認識の土台と考えています。

以上が、開発教育ファシリテーション入門における関連性の再整理ですが、この際ですから、最後に、今後の課題も3点にまとめ直しさせてください。

1)ファシリテーションや参加型教材は内容の深さを伴うとは限らない。

現在、せっかく、ファシリテーションの基本を楽しく学んでいるのに対して水を差すわけではありませんが、現在学んでいるファシリテーションで、現状分析~課題解決~未来展望を「深める」には別の努力も必要なのであり、そのことは常に課題であるということです。

関連して、次の事柄を挙げました。

2)世界認識に関わる開発教育では、構造的理解が問われる。

このことは、学びを単に共感レベルにとどめず、社会あるいは世界を構造的に理解できる力が問われるということです。つまり、構造的な理解なくして、事象面だけを扱う傾向は超えなければならないということ。

センターでは、この課題克服のために、ともすれば捨象されがちな経済学的分析を積極的に取り入れているわけですし、今年から、アドバンストコースの上の段階として「開発教育とシステム思考の融合」をテーマとする研究会を設置しました。多分、皆さんの中からも、こうした開発教育の深化に関心のある方が何人も出るだろうと思います。そのためにも、入門期からしっかりとした展望をもって学んでほしいと願っています。

第3に、これは夜の部で、みさえさんと話していて出てきたことです。

3)開発教育は課題解決学習だが、それが暗い偏見となってはならない。

問題だらけで遅れている国というイメージが先行するような教育だとすれば、先生方は偏見の植え付けが恐くて、開発教育を実践できません。課題はあっても、全体としてその国を捉えるバランスが不可欠です。例えば、開発教育の担い手なら、タイの問題を取り上げるとき、先生自体がタイを好きなのです。好きだからこそ課題に関わりたいのです。付け焼刃の知識伝達では、このあたりが伝わらず、生徒は好きになれるはずのタイの良さを全体として理解できません。

それなら、多少きれいごとに終始するにしても、現状の異文化理解の方が取り組みやすいということになるでしょう。そもそも、開発とは日本にも適用するものであり、問題の所在は途上国だけでないという理解が必要な課題ですね。

以上、長くなりそうなのでここまでにします。3つの相互関連性のポイントと開発教育ファシリテーションの今後の課題ついての復習にご活用ください。紹介した本は入門書ばかりなので、1年間の実りある学習のために、是非、一読してくださいね。

何か考えたこと、新たな疑問等あれば、書き込み歓迎します。 小貫 仁

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